民法1013条(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
【解説】
本来相続人は、相続財産に関しては管理処分権を持つはずですが、遺言執行者がある場合は、遺言執行者にも相続財産の管理処分権があるので、その両者の関係が問題となりますが、本条で遺言執行者の管理処分権が優先される旨が規定されています。そうでなければ、遺言執行者として遺言の内容の実現が困難になるからです。
したがって、たとえば遺贈の対象となった不動産については、相続人が売却したり、抵当権を設定したりすることはできないことになります。
もっとも、遺言執行者の管理処分権が優先されるのは、すべての相続財産ではなく、遺言の趣旨により遺言執行者が管理処分権を有すると認められる財産に限定されます。たとえば、遺言が特定の財産に関するものであれば、遺言執行者の管理処分権は、その特定の財産についてのみ優先されることになり、その他の財産については相続人は管理処分権を失うことはありません。
それでは、相続人が管理処分権を有しない財産について、処分行為をした場合はどうなるかですが、管理処分権がない以上、一般的に無効とするほかないというのが判例のようです。したがって、処分行為は遺言執行者に対する関係だけでなく、相手方との関係においても無効となります。