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民法710条(財産以外の損害の賠償)

【解説】

民法709条により、加害者は被害者に対して「損害」を賠償する義務を負うが、この「損害」の中に「財産以外の損害」の賠償も含まれるということを注意的に規定した条文です。

不法行為において、「損害」というのは、普通は財産的損害を考えると思います。加害者の行為でケガをしたなら治療費とか、宅建業者の不手際で不動産取引で損をしたなら、その損害分などです。

しかし、それだけではなく財産以外の損害、たとえば精神的苦痛に対する慰謝料なども賠償請求することができます。

このような財産以外の損害のことを「非財産的損害」といい、この非財産的損害を金銭に見積もった賠償金を「慰謝料」といいます。

また、この損害賠償請求権は、金銭の請求権ですので、当然相続されます。

この点について、たとえば建物の壁が剥離して通行人が「即死」した、という場合の不法行為による損害賠償請求権の相続というのが問題になります。

この場合、本人は即死しているわけですから、被害=死亡という状態ですから、本人に損害賠償請求権を考えることはできないので、本人に損害賠償請求権は発生しない→それが相続されることもない、と考えることもできます。

しかし、即死だったら、遺族は本人の損害賠償請求権を相続できないけれども、被害から1時間後に死亡すれば、相続できるというのもおかしな話です。このような「即死」の場合でも、本人の損害賠償請求権を相続することができます。