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民法705条(債務の不存在を知ってした弁済)

【解説】

1.非債弁済(総論)

非債弁済というのは、広義では債務が存在しないのに弁済として給付がなされた場合をいいます。

この場合、本来は法律上の原因がないので、不当利得として弁済者は返還請求ができるはずです。しかし、第705条~707条でその返還請求が制限されています。

その中でも、本条は狭義の非債弁済を規定しており、弁済者が債務の不存在を知りながら弁済した場合を規定しています。

2.狭義の非債弁済

本条は、非債弁済において、不当利得の返還請求をするには、不当利得の一般的な要件を見たすことに加え、弁済者が債務の不存在を知らないことを要求しています。

理由は簡単で、債務の不存在を知りながら弁済した者を保護する必要はないからです。

本条の非債弁済において不当利得の返還請求が認められるための要件をまとめます。

① 債務が存在しないこと

債務が存在しない理由は問いません。たとえば、最初から債務が存在しない場合、債務が存在したが、弁済・解除条件の成就・免除で消滅した場合などです。

② 弁済として給付したこと

弁済がなされれば、一部給付や不完全給付でも返還請求することはできません。また、ここの弁済には、代物弁済も含みます(通説)。代物弁済は弁済と同一の効力を有するからです(第482条)。

ただ、弁済は任意になされたものに限ります。強迫や強制執行を避けるためにやむをえず給付したような場合は返還請求することができます(大判大6.12.11)

③ 弁済者が弁済の当時債務の不存在を知らないこと