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民法703条(不当利得の返還義務)

【解説】

不当利得というのは、法律上の原因なく他人の財産又は労務によって受けた利益をいいます。これによって他人に損害を及ぼした者が、返還義務を負うのが不当利得の返還義務です。

具体的にどのようなものが「不当利得」に該当するかは、いろいろな分類がなされており複雑ですが、ここでは一つだけ例を挙げておきましょう。

AからBへ不動産の売買契約がなされました。この売買契約が履行されますと、売主Aは売買代金を取得し、買主Bは不動産を取得できます。Aが売買代金を、Bが不動産を取得できるのは、「売買契約」という「法律上の原因」があるからです。

ところが、この売買契約が無効であったり、取消されたりすると、Aは売買代金、Bは不動産を保有しているのは、売買契約という法律上の原因を欠くことになります。このような場合に、それぞれ不動産や売買代金を返還することを不当利得の返還義務といいます。

このような不当利得の返還義務について、本条では受益者が善意の場合には、「その利益の存する限度」(現存利益)で返還すればよい旨を規定しています。

現存利益は、具体的には取得した原物が残っていれば、その現物を返還しますが、現物を売却していれば、それに代わる価格を返還することになります。悪意の受益者の場合(第704条)のように、利息や損害賠償は不要です。