※この記事は一般的な条文解説で、宅建等の資格試験の範囲を超えた内容も含みます。当サイトの記事が読みやすいと感じた方は、当サイトと資格試験向け教材の関係をご覧下さい。

民法633条(報酬の支払時期)

【解説】

請負契約において、報酬支払は委任と同様、後払いになります。

この点に関して、ちょっとややこしい話があります。請負契約というのは、仕事の完成が目的です。仕事の完成に対して報酬を支払うということになります。つまり、仕事の完成が先履行(文字通り先に履行するということ)になります。請負人には仕事の完成義務があり、注文者には報酬の支払義務がありますが、この両者は同時履行の関係にはなく、請負人の仕事の完成が先履行という意味です。

ただ、これだけだと請負人は、仕事はしたけれども、それに対して注文者が報酬を支払ってくれるか心配ですね。

そこで、仕事の完成は先履行だけれども、物の引渡しが必要な場合は、物の引渡と引き換えに報酬を支払うことになっています。つまり、物の引渡しと報酬支払は同時履行の関係になります。

たとえば建築請負契約でいうと、注文者から建物建築の依頼を受けた工務店や建築会社は、まず、建物を建てなさい、つまり仕事の完成を先履行しなさい。ただ、建物を建てた後、注文者に引渡しというのをするので、そのときは引渡しと報酬支払は同時履行になりますので、報酬を支払わない限り、建物は引き渡せません、と言えることになります。これで、請負人の報酬請求権を確保しようとしているわけです。

まとめると、請負は、仕事の完成→物の引渡しという流れになりますので、

仕事の完成=請負人の先履行
  ↓
物の引渡し=報酬支払と同時履行

ということになります。