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民法613条(転貸の効果)

【解説】

本条は賃借物の転貸がなされた場合の効果について規定されています。

本来賃貸人と賃借人間には賃貸借契約があり、賃借人(転貸人)と転借人の間にも賃貸借契約があるので、賃貸人・賃借人の間、賃借人(転貸人)・転借人の間には直接の契約関係がありますが、賃貸人と転借人の間は直接の契約はないはずです。

しかし、本条では転借人が賃貸人に対して直接義務を負う旨を定めています。

たとえば、AB間の賃料が10万円、BC間の賃料が8万円だったとします。この場合、転借人が賃貸人に対して「直接に義務を負う」ということの意味は、Aからの賃料請求に対して、CはAに対して賃料を支払わないといけないという意味です。

このとき、CがAに支払う賃料は8万円です。これは、どうせCはBに8万円の賃料を支払い。BはAにその8万円分は支払わないといけないので、賃貸人の利益を考え、直接CからAに支払った方が簡単だということです。

それでは、AB間の賃料が8万円、BC間の賃料が10万円の場合は、CはAにいくら払わないといけないか?これは8万円です。

もともとAは8万円の賃料しか受領する権利がないからです。

また、「(転借人は)賃料の前払をもって賃貸人に対抗」することができません。Aからの賃料請求に対して、Cは、それはすでに前払いしたといってAからの請求を断ることはできません。本当に前払いしているのなら、それは別途Bから取り返すしかありません。

さらに、この規定は、あくまで転借人は、賃貸人に対して直接「義務」を負うことを規定している条文ですので、転借人は賃貸人に対して直接「権利」を行使することはできません。

たとえば、前に説明した費用償還請求を、転借人が直接賃貸人に請求することはできません。あくまで転借人は、転貸人(賃借人)に対してこの請求をしなければいけません。