民法565条(数量指示売買の場合における売主の担保責任)
【解説】
この規定は、いわゆる数量指示売買といわれるものです。
これは不動産では、土地の売買価格を1坪いくら、あるいは1㎡あたりいくらで、これを基に全体の売買価格を決めているような場合が数量指示売買にあたります。このような売買価格の決め方の場合は、全体の土地面積が、当初言っていた面積に足りない場合は、明らかに売買代金が高すぎるということになります。
したがって、このような場合に買主から売主に担保責任を追及しようというわけです。
ちなみに、土地の売買契約で、たとえば甲地を売買しようという場合、この土地(甲地)を1,000万円で売買しようと決まったとします。買主は当然現地を見に行って、売主は、この土地は100㎡ありますというように、土地の大きさを説明するはずです。しかし、この場合は、数量指示売買に該当しません。この売買契約では、甲地を1,000万円で売る、という契約だからです。1,000万円という売買代金を決定する場合に、1㎡=10万円で100㎡だから、1,000万円と決めた場合は、数量指示売買です。これは売買代金の決定に、土地面積が決定的な役割を果たしています。ところが、「この土地」を1,000万円と決めた場合は、数量指示売買ではないということです。
この数量指示売買の場合の担保責任ですが、これは原則どおり、善意の買主は、解除も損害賠償も請求できますが、悪意の買主は解除も損害賠償も請求できません。
ただ、注意すべきは、数量指示売買の場合は、代金の減額請求というのができる点です。これは、分かりますよね。この場合は、数量不足のときに、代金の減額という方法が非常に適切な対処になるからです。ただ、この代金減額請求も、善意の買主は請求できますが、悪意の買主は請求できません。
ちなみに、「代金減額請求」というのは、「数量指示売買」と「一部他人物売買」でしか問題になりません。代金の「減額」という方法で対処するのは、この2つの場合以外は適当ではないからです。
目的物の数量が指示された数量を超過する場合…民法565条は、いわゆる数量指示売買において数量が不足する場合又は物の一部が滅失していた場合における売主の担保責任を定めた規定にすぎないとして、同条の類推適用を否定
※実測売買では、「表示の面積が、実測により増減した場合、1㎡当たり○○円で清算する」旨の条項を定めておくのが確実である。