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民法561条(他人の権利の売買における売主の担保責任)

【解説】

本条は、全部他人物売買において売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときの担保責任を定めた規定です。

この売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができない場合というのは、たとえば真の所有者が譲渡の意思がないようなときは、法律的には移転が全く不可能というわけではないでしょうが、このような場合は、移転が不能だと考え、買主は売主に担保責任を追及することができます。

さて、このような全部他人物売買の担保責任についてですが、善意の買主は解除も損害賠償も請求できます。これは基本通り。

ただ、悪意の買主も、損害賠償は請求できないですが、解除権は行使することができます。他人の物だと知って買った人に、損害賠償の権利まで認める必要はないということは分かると思います。

ただ、通常他人物売買の場合、買主は登記記録なども調べるので、真の所有者が売主でないことは知っているが(悪意)、「大丈夫です。真の所有者と話がついていて、確実に真の所有者から買い取れます!」などという売主の言葉を信用して、売買契約を結んでいることが多いと思われます。それならば、解除というのは、契約を白紙の状態に戻すだけですから、悪意の買主にも、その権利だけは認めてやろうというものです。

なお、買主が解除、損害賠償を請求できる場合の権利行使の期間については「知ってから1年」というような制限はありません。