民法540条(解除権の行使)
【解説】
1.解除権の行使(第1項)
契約の解除というのは、いったん有効に契約が成立した後に、契約がなかった白紙の状態に戻すことをいいます。
この解除権の行使は、「相手方に対する意思表示」によって行われます。つまり、単独行為になります。
2.解除の意思表示の撤回(第2項)
そして、この解除の意思表示は、撤回することができません。
解除は、簡単に言えば「契約をやめにする」ということですが、これを撤回するということは、「やっぱり契約は続ける」ということです。このように、やると言ったり、やめると言ったり、というようなややこしいことは相手方の利益を害することになります。
また、この解除の意思表示には、条件を付けることができないとされています。
相手方の地位を不安定にするからです。
ただ、相手方の行為を停止条件とすることは、相手方に特別の不利益とならないので許されます。
たとえば、「3日以内に履行しない場合は、契約は解除されたものとする。」というような場合です。
これは、相手方が3日以内に履行しないことを停止条件としていますが、このような催告と解除を一緒にしたものは、実際にもよく利用されますし、判例も認めています。
3.ローン条項(ローン特約)
ここで、ローン条項(ローン特約)というのを説明しておきましょう。
普通住宅などを購入するときは、銀行でローンを組みます。ところが、買主であるお客さんが売買契約は締結して、銀行にローンを申請したが、審査の結果ローンが付かないときがあります。
このときは、お客さんは大変ですよ。売買契約は締結しているので、ローンが付かなければ、売買代金が支払えません。ということは、買主であるお客さんの債務不履行です。売主である住宅の分譲会社などから解除だけならいいですが、損害賠償まで請求される危険があります。
こういうときに備えて売買契約にローン条項というのを入れておきます。つまり、買主にローンが付かないときは、買主から売買契約を解除することができるというものです。
このローン条項には2種類あります。一つは、ローンが不成立の場合は、「買主は契約を解除できる。」というタイプのものと、もう一つは、ローン不成立の場合は、「契約は解除される」というタイプのものです。
この2つがどう異なるのかというと、これはほとんど日本語の問題です。最初の「解除できる」というのを解除権留保型といい、買主は解除「できる」という権利を持っているだけなので、改めて解除の意思表示が必要になります。
それに対して、後の「解除される」というのを解除条件型といい、ローン不成立の時点で、改めて解除の意思表示をしなくても、自動的に契約が解除「される」ということになります。