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民法525条(申込者の死亡又は行為能力の喪失)

【解説】

1.申込の効力発生時期

契約というのは、双方の当事者の合意が必要となるわけですが、民法ではそれを「申込み」と「承諾」という形で表しています。この場合、先にした意思表示が申込で、その申込みに対して後で行われる意思表示を承諾だと考えてもらっていいです。

それでは、「申込み」の方から説明しましょう。申込みでは、まず申込みの効力がいつ発生するかが問題になります。これは、当事者が対面で向かい合っているときよりも、郵便などでやり取りをする場合を考えてもらえば分かりやすいですが、申込みは、郵便ポストへ投函して発信したときに効力を生じるのか、相手方の郵便受けに配達され、意思表示が到達したときに効力が生じるのかです。

対面で取引しているときでも、理屈は同じです。対面のときは、意思表示の発信と到達が同時であるというだけです。

意思表示を発信したときに効力が生じるのを「発信主義」、意思表示が到達したときに効力が生じるというのを「到達主義」といいます。

そして、申込みは、到達主義がとられます。実は、この到達主義というのは、契約の申込みの場合に限らず、意思表示一般に適用されます。これは、説明しなくても何となく理解できるでしょうが、意思表示というのは発信しただけでは、相手に分かりません。相手に到達して初めて相手もその内容が分かります。

したがって、意思表示というのは一般的に、原則的にといってもいいですが、到達主義がとられます。この一般原則は、契約の申込みにもあてはまるということです。

2.申込者の死亡又は行為能力の喪失

本条は、上記の契約の申込みが意思表示一般の原則に従って、民法97条が適用されるのを前提に、民法97条2項の適用が排除される場合を規定しています。

97条2項は、表意者が通知を発した後に死亡又は行為能力を喪失したときでも意思表示の効力がある旨を定めていますが、契約の申込みについては、申込みは承諾と合致して初めて契約が成立するものであり、承諾のときに申込者が死亡したり行為能力を喪失している場合には、契約を成立させても仕方がないので、申込みの通知を発した後に、申込者が死亡又は行為能力を喪失した場合は、申込みの効力はなくなる旨を規定しています。