民法522条(承諾の通知の延着)
【解説】
1.延着通知義務(第1項)
民法521条2項によると、「申込者が承諾期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う」と規定されていますので、この場合契約は成立しません。
このように「承諾」の意思表示というのは、承諾期間内の「到達」というのを基準にしていますので、承諾の意思表示が、通常ならば承諾期間内に到達するはずであったが、郵便が遅れたなどの理由で、承諾期間内に到達しなかった場合であっても、やはり契約は不成立ということになります。
これはそう考えざるをえません。
しかし、承諾の意思表示をした者は、通常ならば契約は成立しているはずですので、契約は成立しているものと期待しているはずですし、自分も履行の準備を始めたりしている場合もありますので、思わぬ損害を受けます。
そこで、「申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知を発しなければならない」と規定しています。
この通知義務は、通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを「知ることができる」ときに課せられますが、これはたとえば郵便の消印などから、判断が付く場合が多いでしょう。
ただ、この規定には但書があり、「その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。」とされています。
これは、この延着通知義務は、承諾の通知が期間経過後に「到達」した場合に課せられていますので、承諾の通知が延着する前に、承諾期間が過ぎた段階で、申込者において、「すでに承諾期間が過ぎましたが、承諾がありませんでした。」という内容の通知をすでに出している場合もあるでしょう。
この場合には、相手方は契約不成立を知っていることになるので、改めて、延着の通知を行う必要はありません。
2.延着通知義務を怠った場合(第2項)
第1項の延着通知義務を怠った場合には、承諾の通知は、承諾期間内に到達したものとみなされます。
承諾期間内に到達したものとみなされるので、契約は成立することになります。
なお、第1項で説明しましたように、この延着通知義務は、承諾期間内に承諾が到達すべきことを「知ることができたとき」にのみ課されるものですから、「知ることができない」場合には、この第2項は適用されず、契約は成立しません。