債務引受
【解説】
1.総論
債権譲渡というのは、債権者が交替する場合ですが、債務引受というのは債務者が交替(又は追加)される場合です。
債権譲渡については、民法に規定がありますが(第466条―第473条)、債務引受というのは、民法に規定はありませんが、従来からその有効性は肯定されていました。
そして、債務引受にも、免責的債務引受と併存的(重畳的)債務引受があります。
2.免責的債務引受
免責的債務引受というのは、債権者をAとして、旧債務者Bから新債務者Cに対して債務が承継され、Bは債権債務関係から離脱するもので、以降は債務者はCのみとなります。
さて、この免責的債務引受を行うには、A・B・Cの三者で行うことができる点については問題はありません。
次に、債権者Aと引受人Cとの契約で行うことも可能ですが、債務者の交替による更改(514条)や利害関係のない第三者の弁済(474条2項)と同様に、旧債務者Bの意思に反して契約してはならないと考えられています。
それでは、旧債務者Bと引受人Cとの契約で行うことは可能か。これは認められているようですが、これはちょっと引っかかります。たとえば、Bに資力があり、Cに資力がないような場合も考えられますので、債権者Aの利益を考慮する必要があります。そこで、Aの承認を条件とするというような考えがあります。
3.併存的(重畳的)債務引受
併存的債務引受というのは、債権者をAとして、原債務者Bだけでなく、新債務者Cも債務を負い、Bの債務とCの債務が併存するものです。
この併存的債務引受は、保証のような人的担保としての機能があるとされます。
さて、この併存的債務引受を行うには、A・B・Cの三者で行うことができる点については問題はありません。
次に、債権者Aと引受人Cとで契約する場合は、保証と同様の機能を営むので、ちょうど保証契約が債権者と保証人のみの契約で行うことができ、主債務者Bの意思に反しても契約することができたのと同様、原債務者Bの意思に反しても契約することができます(判例・通説)。
それでは、原債務者Bと引受人Cとの契約で可能かであるが、判例は「第三者のためにする契約」として認めている(大判大6.11.1)。「第三者のためにする契約」であるから、この事例での第三者であるAが受益の意思表示をすることによって、AはCに対する請求ができるようになる。