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民法468条(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)

【解説】

1.指名債権の譲渡における債務者の抗弁(第2項)

本条は、債権譲渡がなされた場合の債務者の抗弁についてです。まず、「譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができます。」

この民法の条文は、具体例を言うと分かりやすいと思います。「譲渡人に対して生じた事由」というのは、具体的には債務者が債権者に対してすでに弁済したというような事由のことです。これは、当然のことで、いくら債権者から債権を譲渡しましたと言われても、それがすでに弁済しているのならば、債権の譲受人に対しても、「あれはすでに譲渡人に弁済しました。」と言えないとおかしいです。

弁済以外にも相殺や同時履行の抗弁権なども主張できます。

相殺や同時履行の抗弁権は理解できますか。上図の事例でいうと、Bが債権譲渡の通知を受けるまでに、Aに対して反対債権を有していた場合、Cに債権が譲渡されても、Cに対してAに対する債権で相殺の主張をして、Cの支払の請求を断ることができるという意味です。

また、同時履行の抗弁権の事例は、たとえば、AのBに対する債権が売買代金債権で、Bは目的物の引渡を受けていないので、債権譲渡の通知を受ける以前から、同時履行の抗弁権を有していた場合、Cからの請求に対して、同時履行の抗弁権を主張して、支払を拒むことができるという意味です。

2.異議を留めない承諾(第1項)

この民法468条はちょっと変わっていて、第2項が原則、第1項が例外と考えてもらえば分かりやすいと思います。

第2項が、債務者が債権者に対して抗弁を有していた場合の原則です。この原則に対して、例外があります。それは、債務者が「異議をとどめないで承諾」をしたときです。

このとき、債務者は、債権の譲受人に対して、異議をとどめずに債権譲渡を承諾しているわけですから、先ほどの弁済や相殺、同時履行の抗弁権などの主張ができなくなります。したがって、譲受人Cからの請求を拒むことができません。もちろん、債務者は譲受人に異議を留めない承諾をしても、譲渡人には弁済などの抗弁を主張できます。

この部分では、この「異議をとどめないで承諾」をした場合の扱いが重要ですので覚えておいて下さい。