民法457条(主たる債務者について生じた事由の効力)
【解説】
1.主たる債務者について生じた事由の効力
保証債務には、付従性がありますので、主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生じます。
この規定は、主たる債務者に対する「履行の請求」だけでなく、「その他の事由」による時効の中断も、保証人に対して効力が生じることに注意して下さい。
たとえば、主たる債務者が債務の「承認」をして時効が中断した場合も、保証債務は中断します。
ここが連帯債務と異なるところです。連帯債務では、「請求」には絶対効がありますが、「承認」には絶対効はありませんでした。
2.主たる債務者の債権による相殺(第2項)
この付従性というのは、要するに主たる債務について生じた事由は、保証契約にも影響を及ぼすということです。
そして、本条第2項では「保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。」と規定しています。
今、債権者Aが主たる債務者Bに対して、100万円の債権を有していて、それに対してCが保証人になっているとします。Bはこの100万円の債務とは、別口でAに対して100万円の債権を有しています。この状態であれば、Bは相殺を主張して、主たる債務を消滅させることができます。主たる債務が相殺で消滅すれば、保証債務も付従性で消滅して保証人は保証債務を免れることができます。
ここで、ちょっと確認しておきますと、相殺というのは、要するに両方の債権を清算することですが、いくら反対債権を有していても、自動的には清算されません。相殺というのは、一方的な意思表示で相殺することができますが、黙っていては相殺されません。あくまで、相殺の「意思表示」というものをしない限り、相殺されません。
そこで、先ほどの事例ですが、保証人Cの立場から言うと、BはAに対して反対債権を持っているわけだから、相殺の意思表示をしてくれれば、話はそれで終わりで、保証債務も消えます。逆に言うと、Bが相殺の意思表示をしない限り、主たる債務は依然として残り続け、Cの保証債務も残り続けます。これを保証人が、黙って見ている必要はありません。
したがって、「保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗」して、保証債務の消滅を主張できるという話です。
主たる債務者の有する抗弁権を、保証人が援用するのに似ています。
3.主たる債務者が有する取消権・解除権
本条第2項は、保証人は主たる債務の有する債権による相殺をもって債権者に対抗することができる旨を規定していますが、それでは保証人は、主たる債務者が有する取消権や解除権を行使することができるのか。
これはできないと考えられています。
主たる債務者が取消権や解除権を行使して、主たる債務が消滅すれば、保証人は付従性により、保証債務の消滅を主張できます。
しかし、主たる債務者が取消権や解除権を行使していない場合は、これらの権利の行使は主たる債務者が自ら判断して行使すべきかどうかを決めるべきです。