民法439条(連帯債務者の一人についての時効の完成)
【解説】
たとえば、AのBに対する債権だけが時効で消滅したとします。ちなみに、連帯債務というのは、原則は相対効だという話をしたことから分かりますように、各債務というのはある程度独立性があります。
したがって、連帯債務の各債務は、異なる時期に成立するものでもかまいません。ということは、連帯債務の各債務が時期を異にして、別々に時効にかかっていくということはあり得ます。
このときに絶対効があるわけですが、注意してほしいことがあります。それは、連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の「負担部分」については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。つまり、時効には絶対効がありますが、それはあくまで「負担部分」についてだけだということです。
具体的には、Bの債務が時効消滅したとします。Bの負担部分である500万円については、CもDも債務を免れますので、以後AはBに1円も請求できず、CとDはAに対して1,000万円の連帯債務を負うということです。
CとDの連帯債務の額が、Bの負担部分だけ減少して1,000万円に変わっている点で、Bの時効がC・Dの連帯債務に影響を及ぼしているので絶対効です。
このように時効が負担部分についてのみ絶対効が生じるとされているのは、Bの債務が時効で消滅しても、依然としてCとDが二人で1,500万円の連帯債務を負うとすれば、債権者の請求に応じて全額を支払ったC又はDが、500万円についてBに対して求償できることになってしまいます。
そうすると、求償に応じたBは、さらにAに対して、この500万円分を不当利得の返還請求をして取り戻さなければいけません(「転償」、あるいは「求償の循環」といいます)。
これはややこしいので、当事者間の法律関係を簡易に決済するために、負担部分についてだけ絶対効を認めたとされます。