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民法428条(不可分債権)

【解説】

1.不可分債権

不可分債権とは、債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合の債権をいいます。つまり、不可分債権は「性質上」不可分の場合と、「当事者の意思表示」によって不可分の場合があります。

まず、「性質上」不可分の場合ですが、典型的には、家屋を共同購入した場合の引渡請求権などですが、他に、宅地の共有者と共有地上に家屋を建築する契約のような場合です。共有持分の上に、分割して家屋を建築することは物理的に不可能です。

その他に、共有者の所有権に基づく共有物返還請求権(大判大10.3.18)、貸主が数名ある場合の使用貸借契約の終了を原因とする家屋明渡請求権(最判昭42.8.25)などが例として挙げられます。

次に、「当事者の意思表示」によって不可分の場合ですが、これは本来性質上は可分であるけれども、当事者の意思表示によって不可分債権とする場合です。たとえば、複数の人が種類物を共同大量購入する場合に一括給付の特約をするような場合です。

2.対外的効力

この対外的効力というのは、債権者と債務者の間での効力という意味ですが、まず、「各債権者はすべての債権者のために履行を請求」できます。その意味は、各債権者が、単独で自己に給付せよ、と請求できるということです。

また、「債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行」できます。その意味は、債務者が任意に債権者の一人に対して履行することができるということです。

これらの考え方の基本にあるのは、もともと不可分債権は債権者の数だけの複数の債権があるが、やむをえず不可分の給付がなされるということです。

しかし、上記の対外的効力によると、債権者の一人が、他の債権者の知らない間に勝手に取り立てるという、いわば抜け駆けを認めることになります。立法論的には他にも方法があるようですが、民法の規定によると、この抜け駆けもやむを得ない、ということになります。

3.請求又は履行の効果

まず、債権者の一人が請求すれば、他の債権者のためにも効力を生ずることになり、たとえば時効が中断することになります。

債務者が債権者の一人に履行すれば、他の債権者のためにも効力が生ずることになり、債権が消滅します。ということは、他の債権者が知らない間に、債権者の一人が履行を受領すれば、他の債権者は分与請求の機会を失することになりますが、民法の規定によれば、これも仕方がないということになります。立法論として解決するしかないということでしょう。

4.内部関係

本条は、債権者・債務者間の対外的関係を規定しているのみで、複数の債権者間の内部関係については規定していません。

ただ、債権者間では、履行を受けた債権者は、他の債権者に対して分与しなければいけません。分与の割合は、当事者の合意によることになりますが、それがなければ平等ということになるでしょう。

5.本条の適用範囲

今までの説明でも分かる通り、この不可分債権の規定は、履行を受けた債権者の抜け駆けを認めたり、また、履行を受けた債権者がその受領後に無資力になった場合などに問題が生じます。

したがって、「意思表示による不可分」の適用については、慎重になされる必要があり、判例も、共有物の売却代金債権、共同で金銭を貸し付けた場合の貸付金債権、共有物を収用された場合の補償金債権などについて、不可分債権と認めず、分割債権としています。