民法420条(賠償額の予定)
【解説】
損害賠償というのは、現実には、債権者が「私は、債務不履行によって、コレコレの損害を受けました」ということを具体的に証明して、一定の金額を請求するわけです。
ただ、これは言葉で言うのは簡単ですが、実際にそれを証明するのは難しいです。裁判等になったときには、この金額などをめぐって争いになります。
このように損害賠償請求というのは、なかなか金額を決めるのが難しい。そこで、当事者があらかじめ、争いになったときに備えて、事前に「損害賠償額の予定」というのを定めておくことがあります。
この損害賠償の予定というのは、具体的には、「債務不履行があった場合は、損害賠償の金額は500万円としよう。」というふうに決めておくわけです。
この損害賠償額の予定については、以下の項目を覚えて下さい。
①当事者は実際の損害額を証明して賠償額の増減を求めることはできず、裁判所が増減することもできない。(第1項)
これは当然です。損害賠償額の予定とは、実際の損害はいくらであっても、500万円なら500万円で手を打ちましょう、という意味です。損害賠償額の予定をしているのに、もっと損害が多かったとか、少なかったとか争ったのでは、損害賠償額の予定をした意味がありません。
ただし、例外的に予定した損害賠償額があまりに高額で暴利行為といえるような場合は公序良俗違反として損害賠償額の予定が無効となり、賠償額減額をすることができる場合もありえます。
②損害賠償の予定がなされても、履行請求や契約の解除は可能である。(第2項)
これも当然です。損害賠償額の予定は、損害賠償で解決する場合は、この金額で解決しましょうという意味であって、債務不履行があった場合は、絶対に損害賠償という形で解決するんだという意味ではありません。
したがって、損害賠償額の予定をしても、履行の請求や、契約の解除を排斥するものでありません。
③違約金は損害賠償の予定と推定される。
「違約金」は、債務不履行があった場合のペナルティのことです。
違約金を定めた場合は、それは損害賠償額の予定と推定されます。
④損害賠償の予定は、契約と同時にする必要はない。
損害賠償額の予定は、契約時にあらかじめしておく必要はありません。契約後に、揉めたときに備えて損害賠償額の予定を定めたとしても特に問題はありません。
⑤金銭以外のもので賠償すると予定してもよい。
金銭以外でも特に問題はないので、認められています。損害賠償というのは、普通金銭で行うものですが、それに限定する必要はありません。