民法398条の21(根抵当権の極度額の減額請求)
【解説】
具体例を使って説明していきましょう。
たとえば、極度額を2,000万円として根抵当権を設定したとしましょう。
元本の確定によって、被担保債権の元本が1,000万円となりました。
利息は、普通に年5分の法定利率とします。
この元本の利息については、普通抵当権と異なり、極度額の範囲であれば、「満期となった最後の2年分」に制限されません。
この元本には、元本確定時に150万円の利息が発生していたとします。
根抵当権というのは、被担保債権は変動しますので、単純には行きませんが、この150万円の利息は「最後の2年分」を超えているとします。
しかし、元本1,000万円+利息150万円=1,150万円は極度額2,000万円の範囲内なので、1,150万円全額根抵当権によって担保されます。
ところで、根抵当権の利息は極度額の範囲であれば、「満期となった最後の2年分」に制限されないという民法の条文は、民法398条の3第1項になります。
この条文を見てみましょう。
(根抵当権の被担保債権の範囲)
第398条の3 根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
この条文は、元本確定前にすでに発生している利息だけでなく、元本確定の時以後に生ずる利息についても、極度額内においては、無制限に担保されるとされています。
つまり、根抵当権者は、元本の確定後において、根抵当権を実行せず放置していても、上記の例でいうと、毎年50万円の利息が発生し、その毎年生ずる50万円の利息についても根抵当権で担保されるので、極度額の2,000万円までは「取っぱぐれ」がない状態になるということになります。
つまり、根抵当権者は、従来の債務の額と極度額の差額というのか「空き」の部分を利用して、極度額まではフルに優先弁済を受けることができるということです。
これはおかしいのではないか、ということです。
根抵当権設定者としても、従来の債務の額と極度額の差額の「空き」の部分があれば、それを担保として利用して他から借金して事業の立て直しなどをすることも可能です。
しかし、根抵当権者がいつまでも根抵当権を実行しないで、優先弁済の幅を広げていくのでは不都合だというわけです。
そこで、「根抵当権の極度額の減額請求」というのを認めているわけです。
これで、根抵当権設定者は、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができます。
上記の例でいうと、元本確定によって1,150万円の被担保債権に確定します。
これは利息が2年を超えていても仕方がありません。
しかし、元本確定後の利息については、2年を限度としては認められるが、それ以上は認められないということで、「根抵当権の極度額の減額請求」が認められているわけです。
以上でご理解いただけましたでしょうか。