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民法398条の2(根抵当権)

【解説】

この根抵当権とは何かということですが、抵当権の性質として、「付従性」というのを勉強しました。「被担保債権がなければ抵当権もない」という性質です。

この性質は、場合によっては非常に不便になります。たとえば、AB間で、AがBに継続的に商品を納入していたとします。Bには代金支払義務があります。Aとしては、この商品代金を必ず支払ってもらいたいので、担保を設定したいわけです。このときに抵当権を利用すると、付従性という性質があるため、困ったことになってしまいます。

継続的な取引がある場合には、何度も取引するわけですから、取引→支払→取引→支払…と延々と続いていくわけです。そして、支払がなされると付従性という性質があるので、抵当権はその都度消えてしまいます。すると、取引のたびに抵当権を設定するという手間が面倒です。

また、抵当権というのは登記をしますので、1回1回登記のために登録免許税等の費用を使っていたら、お金がかかって仕方がありません。普通、こういう継続的な取引関係がある者同士の場合は、一定の与信枠みたいなものがあって、たとえば、1,000万円までなら、商品は納入します、みたいな形になっています。

そして、支払が滞ると、商品の納入を止めて、とりあえず先に今までの分を清算してくれ!というような話になります。それならば、それにふさわしい抵当権があってもいいではないか!というのが根抵当権です。

つまり、抵当権を設定するに当たって、極度額というのを設定して、たとえばAB間の一定の取引については、1,000万円を限度に、その範囲内の債権は担保します、とするわけです。したがって、このAB間の被担保債権は、取引→支払があるたびに、変動します。

つまり、根抵当権においては、「個々の債権」との付従性はありません。あくまで極度額を限度に、その範囲内の債権は担保するというわけです。

ただ、この根抵当権は、AB間の取引は一切合財担保するというような包括的なものは認められていません(第2項)。

これは覚えておいて下さい。被担保債権は、「債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。」ということです。

また、個々の債権との間には、付従性だけでなく、随伴性も認められません。したがって、個々の債権を譲渡しても、根抵当権がそれに伴って移転するということはありません。 →民法398条の7