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民法389条(抵当地の上の建物の競売~一括競売)

【解説】

今、更地(さらち)に抵当権を設定したとします。

抵当権というのは、抵当権を設定されても、抵当権設定者は土地を自由に使えます。

抵当権設定者は、土地を自由に使えるので、その土地に建物を建築しました。ここまでは、何の問題もありませんよ。

ところが、借金を返せなかったので、抵当権が実行されたとします。

日本では土地と建物は別の不動産ですので、土地の抵当権の効力は建物に及びません。

したがって、理論上は、土地だけ競売にかけることになります。

そうするとどうなるか。土地は競落人の所有、建物は依然として抵当権設定者の所有ということになります。

抵当権設定者は、他人(競落人)の所有地に建物を持っているということになり、競落人から追い出されてしまいます。

ということは、遡って抵当権設定者の立場から言うと、抵当権を設定しても土地は自由に使える、だから建物も建てられるといっても、いずれ追い出される運命になります。それだったら、土地を自由に使えることにならないではないか。抵当権のメリットはないではないか、ということになります。

そこで、このような場合には「一括競売」という制度が認められます。民法の条文を見てみましょう。「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。」

土地と建物の所有者が別々になって、建物の所有者が追い出されるという事態は、そもそも土地だけ競売するから悪いんです。ならば、土地と建物を「一括して」競売すればいいんだということになるわけです。

そしてこの場合、土地と建物の所有者が別々にならないように、同一人が競落しなければならないとされています。そうしないと、一括競売を認めた意味がなくなるからです。

ここでポイントは、一つは、「更地」に抵当権を設定した場合に、一括競売できるということ。土地の上に、すでに建物が建っている場合は、すぐ後でやります法定地上権の問題になります。

次のポイントは、土地と建物を一括して競売できるが、競売代金のうち、抵当権者が優先して弁済にあてることができるのは、土地の代金だけで、建物の代金からは優先して弁済を受けることはできないという点です。これは、土地にしか抵当権を設定していない以上、当然のことです。