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民法360条(不動産質権の存続期間)
【解説】
不動産質権の存続期間は、10年を超えることができません。
不動産質権については、当事者の特約がない限り、使用・収益権は質権者にあります(第356条)。
したがって、あまりに長期の不動産質権を認めますと、所有者以外のものが不動産を利用することになるので、このような所有者以外の利用というのは、不動産本来の効用を発揮することができないからです。
ただ、この不動産質権の存続期間というのは、意味が分かりにくいのではないかと思います。
これは被担保債権の期間とは異なります。
この不動産質権の存続期間の問題を考えるときは、不動産質権の存続期間と、被担保債権の期間(つまり、弁済期)は頭の中で分けて考えて下さい。
そして、不動産質権の存続期間内ということは、不動産質権の効力があるということです。不動産質権の効力があるということは、質権者に使用・収益権があり、また不動産の優先弁済権(競売権)があるということです。
ということは、不動産質権の存続期間の方が短く、被担保債権の弁済期の方が後に来る場合は、不動産質権の存続期間満了後は、被担保債権は無担保債権ということになります。
したがって、不動産質権の競売権については、被担保債権が弁済期に来たときに行使できるものですから、このような不動産質権は、不動産質権の存続期間内は、質権者は質権の目的である不動産を利用できるだけ、ということになります。
逆に、不動産質権の存続期間の方が長く、被担保債権の弁済期の方が先に来る場合は(これが普通だと思いますが)、被担保債権の弁済期に弁済がない場合であっても、不動産質権の存続期間内に競売をしておかないと競売することができなくなります。