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民法316条(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲)
【解説】
不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する(312条)とされています。
しかし、賃貸人が敷金を受領している場合には、賃料の延滞等については、敷金という担保を有しています。
したがって、賃貸借が終了した場合には、もともと延滞賃料については、敷金を充当することができるので、延滞賃料マイナス敷金の部分についてのみしか債権を有していないので、本条の「敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する」というのは当然です。
ただ、賃貸借が継続している場合には、賃貸人は、延滞賃料について、敷金から控除することなく、延滞賃料全額について賃借人に請求することができるとされています。
しかし、賃貸借が継続している場合でも、「敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する」という点に本条の意味があります。
なお、本条は「敷金」についての規定であり、賃借権設定の対価であり、賃料等の担保の意味を有しない「権利金」について、本条は適用されません。