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民法303条(先取特権の内容)
【解説】
先取特権というのは、法定担保物権の一種です。
そもそも担保物権というのは、他の債権者に優先して弁済を受けることができる物権という意味です。
しかも、「法定」担保物権というわけですから、当事者が約定(合意)して担保物権を設定する必要はなく、約定がなくても担保物権の成立を法律が定めてくれているわけです。
したがって、ある状況の下では(特定の債権については)、法律が他の債権者に優先して弁済が受けることができるようにしてくれているのが、法定担保物権で、先取特権というのはその一種です。
そして、先取特権というのは、いろいろ種類があって、「ある状況」というのは実にいろいろなパターンがあります。
たとえば、従業員の会社に対する給料債権について、会社が破産した場合には、会社に対する大口の債権者が多いでしょうから、債権者平等の原則で、債権額の割合で会社の財産を分配した場合、従業員の給料と大口債権者の債権では格段の差がありますので、従業員はわずかの配当しかもらえません。しかし、給料は従業員の生活を直接支えていますので、破産した会社の財産を配当する場合、従業員の給料をまず弁済してもらうことができるというのが、「雇用関係の先取特権」といわれるもので(民法308条)、典型的な先取特権の一種です。