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民法302条(占有の喪失による留置権の消滅)

【解説】

留置権というのは、目的物を留置することによって債務の弁済を促す担保物権ですから、目的物を留置(占有)することは留置権の成立要件です。

それだけでなく、占有というのは留置権の存続要件でもあるということを定めたのが本条です。

すなわち、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する」ということです。

留置権の本体は、目的物を留置(占有)することですから、その占有を失えば留置権も消滅するわけです。

本条但書に、「第298条第2項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。」とありますが、第298条第2項は債務者の承諾がない限り留置物を賃貸等できない、という規定です。

しかし、留置物を賃貸した場合は、留置権者(賃貸人)に間接占有がありますので、この規定は当然の規定だということになります。

また、留置権者に間接占有があるのというは、「債務者の承諾」がなくてもあてはまり、「占有」自体は継続していることになります。

もちろん、債務者の承諾がなければ、留置権の消滅請求がなされることになりますが(第298条3項)、このことと占有の継続は別問題ということになります。

もともとこの留置権の消滅請求は、債務者の承諾なく賃貸・質入れがなされた場合に、自動的に留置権が消滅するものではなく、あくまで債務者に消滅「請求」を認めているにすぎないので、この留置権の消滅請求がなされない限り、留置権は消滅しないと考えられています。

したがって、留置物の賃貸に債務者の承諾がない場合、消滅請求がなされなければ、間接占有という形で占有も継続しているので、留置権は消滅しません。

この「占有」については、留置権者が第三者に占有を奪われた場合にも留置権は消滅しますが、占有回収の訴えによって占有を回復したときは、占有は喪失しなかったことになるので(第203条但書)、留置権も消滅しなかったことになります。