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民法298条(留置権者による留置物の保管等)

【解説】

1.留置権者の善管注意義務(第1項)

留置権というのは、債務の弁済を受けるために目的物を留置することができる権利ですので、留置権者は被担保債権が弁済されるまで目的物を保管する必要が出てきます。

このときの留置権者の注意義務を規定したのが第1項です。

この留置権者は、目的物を保管するときには、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならないことになります。

これは理解できるでしょう。留置権者は他人の物をあくまで担保の目的で占有しているのであり、被担保債権が弁済されると留置物を返還しなければならないからです。

2.留置物の使用・賃貸・担保供与(第2項)

留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができません。

これも分かりやすいと思います。あくまで留置権者の占有は、被担保債権の弁済を受けるために目的物を留置しているにすぎないので、勝手に使用・賃貸・担保供与はできません。

もし使用・賃貸・担保供与をしたいのならば、債務者の承諾が必要になります。

ただ、「その物の保存に必要な使用」をするには、債務者の承諾は不要です。

第1項で留置権者には善管注意義務が課せられていますが、物の保存に必要な行為をしなければ、かえってこの善管注意義務に違反することになってしまいます。

この「保存に必要な使用」というのは、具体的には、乗馬用の馬に毎日乗ることや、錆を生ずるのを避けるために機械を動かすことなどです。

この「保存に必要な使用」で問題になるのは、賃貸借終了後に目的物を使用する場合です。

判例は、家屋の賃借人がその賃借中に支出した必要費または有益費に基づく償還請求権につき留置権を行使して、賃貸借期間の満了後に、引き続きその家屋に居住するのは、留置物の保存に必要な使用といえるとしています(大判昭和10.5.13)。

3.留置権の消滅請求(第3項)

留置権者が前2項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができます。

「前2項の規定に違反」となっていますので、善管注意義務(第1項)違反でも、債務者の承諾を得ない使用等(第2項)でも、債務者は留置権の消滅請求をすることができます。