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民法282条(地役権の不可分性)

【解説】

1.地役権と共有

本条は地役権の不可分性に関する条文ですが、その前提として、地役権と共有全般について話をしましょう。

地役権について、要役地や承役地が共有の場合について、民法に結構ややこしい規定があります。

これを、一つずつ丸覚えすると大変で、覚えてもすぐ忘れそうなところです。

しかし、地役権の基本的な理解ができてれば、あまり知識を増やさずに、この地役権と共有に関する規定を一気に攻略できます。

覚え方のポイントは2つに要約されると思います。

①地役権は「土地」の便益のため→したがって、共有持分というものの上には地役権は成立しない

②法律は、地役権をできるだけ成立・存続させようとしている

この2つに要約されます。①は2つに分けてもいいんですが、ポイントは共有持分の上には地役権は成立しないということで、それは結局地役権は「土地」の便益のものだというところからきているから、一つにしました。

今たとえば、要役地所有者がABの共有だったとします。Aの上にだけ地役権は成立しないわけです。

共有持分の上に地役権が成立しないとすると、ABともに、地役権が成立するか、AもBも地役権を取得しないかのどちらかです。つまり、オール・オア・ナッシングの世界。

それでは、形の上では、共有者の一人の上にだけ地役権が成立するかに見える事例の場合は、どちらにすればいいのか。AB両方が地役権を取得するのか、AB両方とも取得しないのか。この判断に迷います。

この判断の基準を与えてくれるのが、先ほどの②の「法律は、地役権をできるだけ成立・存続させようとしている」というポイントです。

要するに、両方取得するということになるわけです。

この点は非常に重要で、これから何回か出てくると思いますので、しっかり覚えて下さい。

2.地役権の不可分性

それでは以上を前提に、地役権の「不可分性」というのをやります。

「不可分」ということですから、「分けることができない」という性質です。

具体的には、民法の規定を見てみましょう。「土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。」

つまり、要役地でも承役地でも、土地が共有の場合には、共有者の一人についてだけ地役権を消滅させることができないということです。

これは先ほどの共有持分の上に地役権は成立しないということですね。

丁寧に説明しますと、地役権は「土地」の便益のためにあり、「人」の便益のためではないと書きました。したがって、たとえば要役地の甲地が共有地であった場合に、共有者の一人については地役権があり、他の共有者についてだけ地役権を消滅させ、その者に地役権がないという事態はおかしいということになります。

上図で、「甲地」に地役権がある以上、甲地の共有者は全員地役権を持っていないとおかしい、という意味です。

不可分性について、もう1点、民法に条文があります。「土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために又はその各部について存する。ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。」

これも意味が分かりますか?「甲地」の便益のために地役権は認められるわけですから、「甲地」が甲1、甲2、甲3…と分割されたり、その一部が譲渡されても、もともとの「甲地」全体に地役権が成立するというわけです。

ただ、これも例外があって、たとえば承役地である乙地の一部を分割したが、Aはその部分を全く通行していないという場合であれば、その部分について地役権を消滅させても問題がありません。この場合は例外的に、地役権は存続しません。