民法250条(共有持分の割合の推定)
【解説】
1.持分とは
一つの物を複数の人が所有している場合、その複数の所有者を共有者といいますが、共有者には、一つの物に対して持分というのがあります。その所有の割合のことです。
一つの土地を、二人の人が共有している場合、その持分は、それぞれ1/2だとか、1/3と2/3だ、とかいう具合です。もちろん、これは足して「1」にならないとおかしい。
この持分の決め方ですが、これは当事者が自由に決めればいいということになります。
2.共有持分の割合の推定
ただ、当事者がこの持分を定めなかった場合は、本条が適用されて、「各共有者の持分は、相等しいものと推定」されます。したがって、共有者が2人なら1/2ずつ、共有者が3人ならば1/3ずつ、となります。
3.持分の譲渡
ところで、所有権は物を自由に処分できる権利だと言いましたが、共有者がその持分(持分も所有権です)を他人に譲渡することもできます。
この持分に関しては、その共有者の所有権である以上、単独で売却等の譲渡をすることができ、その持分の譲渡に関しては、他の共有者の同意は不要です。
持分について抵当権を設定することもできます。
4.持分権の主張(共有者間)
共有物を第三者等から侵害された場合はどうなるでしょうか。
ABC共有の土地があったとします。共有物は、各共有者が「全部」の使用ができますが、共有者間で、たとえばAがBの共有物の使用を妨害していた場合、BはCの同意を得ることなく、単独でAに対して妨害の差止請求(妨害をやめろ!という請求)ができます。
これはBが共有者の一人で持分を有している以上、当然の話です。
5.持分権の主張(対第三者)
それでは、共有者以外の第三者が、共有物の使用を妨害した場合はどうでしょうか。
第三者に使用を妨害された場合、まず、その妨害を止める必要があります。
判例は、この場合の妨害の差止請求は、共有者の一人が「単独」で行うことができるとしています。判例は、その理由として、この妨害の差止請求は、共有物の「保存行為」に該当するからだと言います。第三者の妨害に対して、その差止請求をするのは、共有物の現状を維持する行為だといえます。したがって、この場合は共有者が単独でできます。
さて、共有物を第三者に侵害されて、妨害差止請求をして追い出したとします。これだけでは、話は終わりません。出ていくのは当然だとしても、その第三者は、一定期間人の土地を占有していたわけですから、その占有していた間の損害を賠償してもらわないといけません。
この不法行為による損害賠償も、先ほどの妨害の差止請求と同じような話のように思えます。しかし、この場合に共有者の一人が、「単独」で共有物全部の分について、損害賠償を請求することを判例は認めていません。
つまり、各共有者は、自己の持分についてのみの損害賠償しか認めておらず、他人の持分については請求できないとしています。
これは、損害賠償請求というのは、金銭債権で分割することが可能です。したがって、人の分までの請求は認めていないんだと考えればいいでしょう。