※この記事は一般的な条文解説で、宅建等の資格試験の範囲を超えた内容も含みます。当サイトの記事が読みやすいと感じた方は、当サイトと資格試験向け教材の関係をご覧下さい。

民法198条(占有保持の訴え)

【解説】

1.占有の妨害

占有者の占有が妨害された場合、それが占有を「奪われたとき」(侵奪)には200条の「占有回収の訴え」を提起することができるので、本条はその侵奪以外で占有が妨害されたときに提起できます。

言葉の上では、このように占有保持の訴えと占有回収の訴えを区別することができますが、実際には、占有が侵奪されたかどうかというのは、なかなかに区別が難しいものです。

たとえば、Aが占有する土地にBが立ち入ったというような場合です。このBの立ち入りは、Aの占有を奪った(侵奪した)と言えるのか、単にAの占有を妨害しているだけなのかということです。

判例では、他人の占有地に不法に建物を建築する場合には、「他人の占有を侵奪するものであって、占有の妨害ではない」としているようです(大判昭15.10.24)。これは、「建物を建築」という点が、ポイントなんでしょう。単に他人の土地を使用しているというだけではなく、建物まで建ててしまうことにより、元の占有者の占有を完全に奪っているからです。

2.請求の内容

占有保持の訴えの内容としては、「妨害の停止」及び「損害賠償請求」になります。

この「妨害の停止」というのは、妨害を除去し、原状を回復することまでをいいます。その費用は、妨害者が負担するというのが判例です。