民法188条(占有物について行使する権利の適法の推定)

第188条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

【解説】

1.趣旨

本条は、占有者が、占有すべき正当な権利を有することを推定している規定です。

もともと占有権というのは、物に対する事実上の支配そのものを保護することによって社会の秩序を維持しようというものです。また、占有者は多くの場合、適法な本権を有している可能性が高いからです。

2.推定される権利

「占有物について行使する権利」というのは、所有権や質権などの物権だけでなく、賃借権のような債権も含みます。

ただ、第186条で、「占有者は、所有の意思をもって占有をするものと推定」されていますので、特段の事情がない限り、占有者は所有者と推定されることになります。

3.推定の効果

この推定は、すべての人に対して効力を生ずるのではなく、所有者から権利を取得したといって占有する者は含まないと考えられます。

たとえば、賃借人が所有者・賃貸人との間で賃借権の存否について争っているような場合、賃借人が現に占有していても適法な賃借人と推定されるわけではありません。

このような場合は、一般の証明責任に従って、賃借人は賃借権を立証すべきです。