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民法181条(代理占有)

【解説】

1.自己占有(直接占有)

占有者が、自ら物を直接占有している場合が自己占有(直接占有)です。

2.代理占有(間接占有)

占有というのは、必ずしも自ら物を占有(自己占有)している必要はありません。

他人の占有を通して占有している場合でも占有といえます。これを代理占有(間接占有)といいます。

この場合に実際占有している他人のことを占有代理人といいます。この占有代理人の占有は自己占有(直接占有)になります。

たとえば、AがBに建物を賃貸しているとします。賃借人Bは、当該建物を「自己」占有しています。念のため、Bの占有は「自主」占有ではありません。Bには所有の意思がないからです。

そして、賃貸人Aも、賃借人Bの占有を介して占有しているので、「代理」占有しています。この賃貸人Aの占有は、「自主」占有です。

3.取得時効との関係

たとえば、A所有の土地を、Bが善意無過失で占有を開始して8年が経過し、次にBはその土地をCに賃貸して3年が経過したとします。

Cは賃借しているので、「所有の意思」はなく所有権を時効取得しません。

問題は、Bは時効取得するのか、という問題があります。

「占有の喪失」は、時効の中断事由ですが、BはCに賃貸しているので、占有を喪失しており、時効は中断し、時効取得しないというふうになりそうです。

しかし、Bは時効取得するというのが結論です。なぜか、確かに普通「占有」というのは、その土地に住んでいるような場合が典型ですが、必ずしも自分自身が住む必要はありません。この事例で言えば、BはCにその土地を売却したわけではなく、賃貸しているにすぎません。Bは、依然として賃借人のCを通して占有を継続していると考えます(代理占有)。

したがって、Bは占有の開始に善意無過失で10年以上占有しているので、この土地を時効取得します。