民法166条(消滅時効の進行等)
【解説】
1.消滅時効の起算点(第1項)
本条は、消滅時効の起算点に関する条文です。
たとえば平成21年3月1日に返済期限を1年後として、AはBにお金を貸しました。Aがこの債権を10年間放置していれば、時効で消滅しますが、それでは10年というのは、いつからカウントし始めるのか、というのが、この消滅時効期間の起算点の問題です。
これは、平成22年3月1日です。Aは、平成21年3月1日にお金を貸しましたが、平成22年3月1日の返済期が来るまでは、Bに返済を請求できません。消滅時効というのは、権利を行使できるのに、行使しなかったから時効で消滅してしまうわけです。もともと権利が行使できない状態なのに、時効期間が進行を始めてしまえばAは困ります。つまり、「権利行使が可能」であるにもかかわらず、行使しなかった場合に、時効期間は進行を始めます。ココがポイントです。
基本的な考え方は以上ですが、もう少し正確に見ていきましょう。この問題は、債権に
- 確定期限が定められたもの
- 不確定期限が定められたもの
- 期限の定めのない債務の場合、
以上の3つの場合を分けて正確に覚えておいて下さい。覚え方は、先ほど言った「権利行使が可能」な時期はいつかと考えればいいわけです。
2.確定期限が定められた場合
まず、確定期限付きの債権の場合は簡単です。先ほどの平成21年3月1日にお金を貸した例の場合で、定められた期限が到来した時、つまり平成22年3月1日ということです。
3.不確定期限が定められた場合
次に、不確定期限付きの債権の場合ですが、不確定期限というのは、「私の父が死亡すれば家を売る」というような場合です。この場合も、期限が到来すれば権利行使が可能です。つまり、「父が死亡した時」に期限が到来し、消滅時効期間が進行し始めます。
4.期限の定めのない債務の場合
最後に期限の定めのない債務の場合です。期限の定めのない債務というのは、債務は発生したが、期限をいつとははっきり定めなかった場合です。
この期限の定めのない債務というのは、実は債権者はいつでも請求できるとされます。
いつでも請求できるということは、いつでも権利行使が可能というわけですから、債権の成立時から消滅時効期間が進行し始めます。
以上、「権利行使が可能な時」ということで押さえておいて下さい。
※消滅時効の起算点と混乱しやすい「履行遅滞となる時期」については、412条を参照して下さい。