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民法147条(時効の中断事由)

【解説】

1.時効の中断

時効制度は、権利があっても、それを長期間放っておくから権利が消滅したり、人に取られたりするわけです。

放置せず、権利を行使すれば、権利の上に眠っているとは言われませんし、一定の事実状態が継続しているといえなくなります。そうすると、時効は成立しません。

これを「時効の中断」といいます。この時効の中断というのは、たとえば先ほどの例で言うと、債権は10年で時効消滅しますが、5年経過したときに、権利を行使すれば、これまで経過した5年はご破算になり、また、ゼロから時効期間をカウントし始めます。

この点で、時効完成間際に時効期間が一時的に停止して時効完成が猶予され、すでに経過した期間が無駄にはならない(つまりゼロに戻るわけではない)「時効の停止」とは異なる。

そして、この時効の中断というのは、具体的には、以下の「中断事由」があります。

  1. 請求
  2. 差押え、仮差押え又は仮処分
  3. 承認

2.承認(第3号)

時効中断事由の「承認」は、「請求」とは逆で、債務者が債権者に対して、確かに自分が債務を負っているということを認めることです。

この「承認」というのは、請求、差押等と異なり、権利者の権利行使そのものでありません。

しかし、承認することにより、権利の存在が明らかになります。

また、権利者は承認を受けると、とりあえずは権利の行使を差し控えることも多いと思います。

このような場合に、時効の完成を認めるのは不当だということで、時効の中断事由とされています。

この「承認」に関しては、特に形式は要求されていませんので、「請求」の場合とは異なり、口頭の承認でも、普通の郵便での承認でもよく、裁判外の承認も立派な時効中断事由です。

ただ、口頭や普通の郵便での承認は、後で争いがあったときに証明できませんので、何らかの書面はもらっておくべきですが、法的には証明できさえすれば、口頭でもよいということです。

この承認に関しては、他の具体例も覚えておいて下さい。たとえば、「利息の支払い」と「一部の支払」が「承認」になるということは覚えておいた方がいいでしょう。

利息を支払うということは、元本の存在を認めていることになるので、元本の承認になります。

債務の一部の支払いも、それが一部であることを認めた上での支払いなら、残額の債務の承認になり、時効は中断します。

3.時効完成後の「承認」

もう一つだけ、「承認」に関して追加しておきます。正確に言うと、時効の中断の問題ではないんですが、「承認」を説明している中で説明した方が分かりやすいと思います。それは、時効が完成した後に債務を承認したという事例です。

これは、時効完成後の問題ですので、先ほど書いたように時効の中断の問題にはなりませんが、このときは債務者が時効が完成していたことを、知っていた場合でも、知らなかった場合でも時効を援用できません。

理由は、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしないであろうと考えるし、最初に説明しましたが時効制度というのは、一定の事実状態が続いたときに、それをそのまま認めようというものでしたが、承認することによって今まで続いてきた事実状態が崩れたと言えるからです(最判昭41.4.20-昭和37(オ)1316)。