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民法145条(時効の援用)

【解説】

たとえば、AからBがお金を借りたが、その後、Bは困っているだろうということで、Aからは特に請求もなく、時間が経過していったとします。

このような債権というのは、10年で時効消滅します。10年以上経過して、Bはやっと仕事もうまくいき、Aにお金が返せる状況になったとします。Bは、仕事がうまくいっていないときに、特にこれといった督促もせず、じっと待っていてくれたAに感謝しています。

このときに、10年でこの債権は時効消滅しているので、BはAに借金を「返してはいけない」というのは、ヘンな話ですよね。

時効というのは、それによって利益を受ける者が、時効により利益を受けることを潔しとしない場合、時効による利益を放棄することも認めています。時効期間が経過しても、借金を返してもいいわけです。

もちろん、時効期間が過ぎているということで、時効の利益を主張してもよいわけです。この時効の利益を受ける旨の意思表示を「時効の援用」といいます。

要するに、時効期間が経過した場合は、時効の利益を放棄してもよいし、時効を援用してもよいわけです。これは当事者の意思に任されています。民法も、「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」としています。

この時効の援用についてですが、今説明しましたように「当事者」が時効を援用しますが、この「当事者」とは、判例は「時効により直接利益を受ける者」に限られるとしています。

たとえば、保証人や連帯保証人は保証した主たる債務が時効消滅すれば、自分は保証債務を免れる立場にありますので、時効により直接利益を受けます。

また、抵当権の物上保証人や第三取得者も、被担保債権が時効消滅すれば、抵当権が消滅して、直接利益を受けることができますので、時効により直接利益を受ける者に該当します。

したがって、保証人や物上保証人も時効を援用できます。