民法125条(法定追認)
【解説】
1.法定追認
追認に関連して、「法定追認」というのがあります。
「法定」という言葉は、法律ではよく使われますが、要するに、「法」律が「定」めた、という意味です。
法定追認というのは、当事者は追認の意思表示をしていないけれども、法律が追認したものとみなしてしまう制度です。
この法定追認については、「追認をすることができる時以後」に一定の事実があったときに認められます。
追認もできない状態で行った行為について、「追認とみなす」というのはおかしいですよね。
以下で法定追認事由について説明していきますが、これらの行為は、追認の意思表示はしていないけれども、契約等が有効であることを前提とした行為です。このような行為を法律で追認とみなしてしまおう、ということです。
2.法定追認事由~全部又は一部の履行(第1号)
AがBに対して不動産を譲渡しました。Aは制限能力者でも、詐欺・強迫されたものでもいいんですが、取消権を有しています。Aが追認の意思表示はしていないけれども、追認できる状態で(たとえば、未成年者なら成年になってから)、不動産をBに引渡したり、Bから代金を受領したりした場合です。
この説明で分かりますように、この「全部又は一部の履行」というのは、取消権者が債務者として自ら履行する場合(上記事例ではBに不動産を引渡す)だけでなく、債権者として債務を受領する場合(上記事例ではBから代金を受領する)も含みます。
3.履行の請求(第2号)
第1号の事例で、AがBに代金を請求したような場合です。
これはもちろん、取消権者が「請求」した場合に限ります。
相手が勝手に請求してきただけで、追認とみなされてはたまりません。
4.更改(第3号)
更改契約というのは、以前の契約をやめて、新しい内容の契約に切り替えることです。
したがって、更改を行うというのは、以前の契約が有効であることを前提とする行為です。
5.担保の供与(第4号)
第1号の事例で、Aではなく、Bが制限行為能力者であった場合、Bが売買代金債務を担保するため担保を供与したような場合です。Bの法定追認になります。つまり、取消権者が債務者として担保を提供する場合ですね。
それだけでなく、第1号の事例そのままで(つまりAが制限行為能力者)、Aの売買代金債権のためにBから担保の供与を受けた場合のように、取消権者が債権者として担保の供与を受ける場合も含まれます。
6.取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡(第5号)
第1号の事例で、Aが売買代金債権を第三者に譲渡したような場合です。
これは当然、取消権者が行った場合に限られます。
7.強制執行(第6号)
第1号の事例で、Aが債権者としてBに対して売買代金債権について強制執行をしたような場合です。