民法111条(代理権の消滅事由)
【解説】
1.代理権の消滅事由(第1項)
代理権というのは、本人と代理人の関係ですので、代理権が消滅する場合というのを本人側の事情と、代理人側の事情で分けて混乱しないようにしておいて下さい。
まず、本人側の事情ですが、まず本人が死亡すれば代理権は消滅します。これは代理人側も同じで、代理人が死亡しても、代理権が消滅します。
この本人・代理人の死亡が代理権の消滅事由だということは、代理における本人の地位とか、代理人の地位というのは、その死亡によって相続されないということを意味します。
次に、代理人が破産手続開始の決定を受ければ、代理権は消滅します。代理人というのは、本人に代わって財産の管理をするわけですから、自分の財産も管理できず、破産した人は代理人として不適当というわけです。
また、代理人が後見開始の審判を受けた場合も代理権は消滅します。後見開始の審判を受けるということは、代理人が成年被後見人になったということです。他人に代わって契約をする者が、成年被後見人では困るというのは理解できると思います。
2.代理権の消滅事由(第2項)
本条の第2項を見てみますと、「委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。」となっています。
「委任による代理権」というのは、任意代理のことです。
それでは、委任の終了事由はどうなっているかというと、
- 委任者又は受任者の死亡
- 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
- 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
ここで111条1項との違いは、任意代理の場合は、本人の破産によっても代理権が消滅するという点です。
この説明の仕方はいろいろあるでしょうが、通常、本人が代理人を選任する場合、報酬を支払うことが多いでしょう。本人が破産してしまいますと、せっかく代理行為をしても本人は報酬を支払うことができません。
このように報酬を支払う側の人間が破産した場合、契約は終了する旨の規定は民法の他にも出てきます。
3.代理権の消滅事由のまとめ
以上で、一通りの説明が終わりましたので、上の表を見て下さい。
ややこしいのは、最後に説明した、任意代理の場合の本人の破産が代理権の終了事由だということは、法定代理の場合は、破産は代理権の終了事由にはならないということです。
法定代理は、具体的にはたとえば未成年者の場合を考えてもらえば分かりますが、本人は子供、代理人は親というパターンですよね。
子供というのは、それだけで親が保護してあげないといけないわけですから、子供が破産したとたん、親が保護できなくなるというのは変な話です。
したがって、法定代理の場合は、本人の破産というのは代理権の終了事由には該当しません。