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民法100条(本人のためにすることを示さない意思表示)

【解説】

代理人が法律行為を行ったときに、本人に効果が帰属するには、以下の3要件が必要です。

  1. 代理人が有効に契約等をしたこと
  2. 代理人が顕名をしたこと
  3. 代理人に代理権があること

このうち、本条は2.の代理人の顕名がない場合の規定です。

「顕名」というのは、難しい言葉ですが、「名」前を「顕(あらわ)す」ということです。

誰の名前を顕すか?本人の名前です。

つまり、「代理人が代理行為を行うにあたって、本人の名前を示しなさい」というのが、顕名です。

A:本人、B:代理人、C:相手方として、Bが代理行為を行うにあたって、黙ってBの名前で契約を行いますと、相手方のCとしては、契約の相手はBだと思ってしまいます。

しかし、実際に売主になるのはAですよね。ということは、Bは自分のために契約をしているのではなく、Aのために契約しているということを相手に教えてあげないといけません。これを顕名というのです。

具体的には、Bは代理行為を行うにあたって、「A代理人B」というふうに表示します。Bは、Aの代理人として、契約していますよ、ということです。

それでは、Bが契約をするにあたって顕名をしなかったとしたらどうなるか?それが本条です。

これは、B(代理人)自身のために契約をしたものとみなされます。これは当然ですよね。

ただ、これには例外があって、顕名をしなかったとしても、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、本人に対して直接にその効力を生ずるとされています。

先ほど説明しましたように、代理人に顕名が要求されているのは、相手方に効果が帰属するのは誰かを教えてあげるということですよね。

教えてあげなくても知っているのなら、それは本人に効果を帰属させても問題はありません。相手方に過失がある場合も同様です。