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民法99条(代理行為の要件及び効果)

【解説】

1.代理

「代理」というのは、どういうものかというと、一言で言えば、他人に代わって(代理して)契約などをすることです。

Aが不動産を売却したいと思ったとします。しかし、不動産の取引というのは、知識もいるし、金額も高額なので、素人が自分で行うのは怖い。また、買主を自分のツテだけを頼って探すのも難しい。それならば、不動産屋に依頼して売却してもらえれば、手数料は払わないといけないけれども、専門家だし、不動産の情報も集まるところなので、不動産を買いたいという人も知っている。不動産を買いたいという人をいろいろ知っているので、高く買ってくれそうな人も知っている。それならば、手数料を払ってもペイするということですよね。

また、自分で買主を探して契約をするというのは、別の仕事を持っている人は大変煩わしい。ということで、「代理」という制度があるわけです。

この代理を勉強するに当たっては、まず登場人物のネーミングを覚えて下さい。

上図を見て下さい。Aが不動産を所有していて、この不動産の売却をBに依頼し、BがCに不動産を売却したとします。AがBに代理を依頼したわけですが、頼んだAのことを「本人」、頼まれたBを「代理人」、Bと契約したCを「相手方」といいます。

別に難しい表現ではないと思いますが、代理の場合、この3人の登場人物をそのように表現します。以後「本人」「代理人」「相手方」といきなり表現しますので、確認しておいて下さい。

この代理制度の特徴は、よく三面関係といわれます。普通の契約の形態なら、AがCに直接不動産を売ります。このとき、契約の「当事者」は、AとCで、売主が買主に不動産を引き渡し、また買主は売主に代金を支払うという契約の効果は、当事者であるAとCに及びます。これは当たり前のことで、契約をした人が、契約の効果を受けるということです。

ところが、代理では本人は直接契約するわけではありません。契約は代理人が行います。契約書にハンコを押すのも代理人です。

しかし、契約をするのは代理人でも、実際に売主になるのは、本人です。

このように、代理では、実際に契約を行う人と、契約の効果の帰属を受ける人が分かれます。

つまり、「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。」ということになります。これが代理制度の大きな特徴です。

この代理人が行った行為の効果は、「直接」本人に帰属するのであって、いったん代理人に効果が帰属し、その後本人に移転するわけではありません。

さて、以上の特徴を有する代理ですが、代理人が代理行為をした場合に、それが本人に効果が帰属するためには、以下の3つの要件(代理の3要件)が必要です。

  1. 代理人が有効に契約等をしたこと
  2. 代理人が顕名をしたこと
  3. 代理人に代理権があること

2.代理の種類

このうち3.の代理権ですが、代理には法定代理と任意代理の2種類あります。

まず、「法定代理」ですが、これは読んで字の如く「法」律が「定」めた代理のことです。 制限能力者のところで、未成年者の「法定代理人」は、親権者(親)などだという話が出てきたと思いますが、これは法律が親権者には代理権があると定めているためです。このように法律の規定により代理権が発生する場合のことです。

「任意代理」というのは、本人の意思に基づいて代理権が発生する場合です。

本人が不動産の売却を不動産屋に依頼するような場合です。通常代理というと、この任意代理を念頭においていることが多いですね。