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民法89条(果実の帰属)

【解説】

1.果実の帰属

前条で、天然果実と法定果実の定義を規定した上で、それではその天然果実・法定果実は誰に帰属するのかというのを定めたのが本条です。

2.天然果実の帰属

天然果実は、「元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者」に帰属します。

「分離時」の収取権者に帰属するということです。

天然果実も、元物の所有者に変更があった場合には、果実の産出について前所有者の努力もあるでしょう。それを分け合うということも考えられないことはないかもしれませんが、その果実の産出についての努力の多少を見極めるのは難しい。また、天然果実については、分割することが困難なものもあります。

ということで、「分離時」の収取権者に帰属すると定めているわけです。

ここで果実が帰属するのは、「収取する権利を有する者」という表現になっており、所有者とはなっていません。

もちろん、この収取権者の最も典型的な例は所有者です。

しかし、それだけではないから、このような表現になっています。たとえば、善意占有者(189条1項)、地上権者(265条)、永小作権者(270条)、賃借権者(601条)、不動産質権者(365条)です。

3.法定果実の帰属

これに対して法定果実は、「権利の存続期間に応じて、日割計算」で取得することになります。

天然果実に対して、法定果実は「使用の対価」ですから、元物について所有権などを有している期間に応じて、これを分配することが可能ですし、またそうすべきだといえます。

なお、この条文では1項とことなり「取得」するとなっていますが、この法定果実の日割計算は権利の帰属を定めたものではなく、内部関係を定めたものだと考えられます。

たとえば、家屋を賃貸している場合に、月の半ばで家屋の所有者の変動がある場合、家賃が翌月払いだったとすれば、前月末の所有者(つまり前所有者)が翌月1ヶ月分の賃料の支払を受け、それを次の所有者との間で日割計算で分配することになります。