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民法25条(不在者の財産の管理)

【解説】

1.不在者の財産の管理及び失踪の宣告~総論

本条からは第4節「不在者の財産の管理及び失踪の宣告」の規定になります。

この節はタイトル通り「不在者の財産の管理」と「失踪の宣告」の2つの制度が規定されています。

まず、「不在者の財産の管理」ですが、そもそも、不在者とは、住所又は居所を去ったまま、容易にそこに帰ってくる見込みのない者のことです。

この不在者は、生存が確認されている場合もあるでしょうし、生死不明の場合もあります。いずれにせよ、この不在者のために財産の管理が必要となります。

次に、「失踪の宣告」ですが、不在者が生死不明の場合は、不在者の財産の管理とともに、不在者の身分関係について利害を有する者(配偶者や相続人等)がいます。これらの者は、その地位が不安定となります。

そこで、不在者の生死が不明な一定の場合に、死亡したものと扱うことによって法律関係を確定するのが失踪宣告の制度です。その後、失踪者が戻ってくれば、従来の法律関係を復活させます。


2.不在者の財産の管理(第1項)

本条は、前者の「不在者の財産の管理」について規定しています。

本条は、不在者がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる旨を規定しています(第1項)。

もともと、不在者であっても、管理人を置いているのであれば、家庭裁判所の干渉は不要です。ただ、不在者が管理人を置いている場合であっても、本人の不在中に管理人の権限が消滅したときは、やはり財産の管理の必要が出てきますので、管理人がいない場合と同様の扱いになります(第1項但書)。

この場合の家庭裁判所が命ずることができる処分ですが、具体的には、管理人の選任・改任や、その他の財産管理に必要な処分です。

次に、家庭裁判所にこの処分を請求するのは、利害関係人又は検察官です。検察官が入っているのは、公益に関係するからだと言われています。

「利害関係人」というのは、たとえば、不在者の債権者や相続資格者などを指し、単なる友人や隣人は含まないとされています。


3.処分の取消し(第2項)

家庭裁判所の財産の処分の命令の後に、本人が管理人を置いたときは、不在者の財産管理は不要になるので、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消す必要があります。