民法20条(制限行為能力者の相手方の催告権)
【解説】
1.制限行為能力者の相手方の催告権
制限行為能力者が単独で契約等を行った場合には、これを取り消すことができます。
そして、「取消」というのは、一応その行為は有効であるが、一旦取消がなされると遡って無効となるということでした。
ということは、制限行為能力者の行為は、制限行為能力者の意思によって、有効となったり、無効となったりすることになります。
これでは、相手方はその行為が有効になるか、無効になるか不安定な状態になります。
もちろん、取消権は追認できる時から5年間で時効消滅(行為の時からは20年)し、短期の時効期間が定められていますが、それでも最低でも5年間という長期間相手方は不安定に状況におかれます。
この相手方の不安定な状況を救うのが本条の「制限行為能力者の相手方の催告権」です。
制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者や保護者に対して、1月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。
この催告権というのは、ある人に対して一定の行為を要求する行為です。ただ、要求するだけでは、相手方に無視されたときに困ります。催告「権」というからには、相手方が何らの対応を取らなかったときには、一定の効果を生じるようにしているわけです。
制限行為能力者の相手方の催告権は、追認するかどうかを催告するわけですが、相手方が確答(返事)をしなかったときには、「追認」又は「取消」という効果を生じさせます。
これで、相手方の地位が確定するわけです。
本条では、制限行為能力者の相手方が、誰に対して催告したときに「取消」とみなされ、誰に対して催告したときに「追認」とみなされるかを規定しています。
この覚え方は、催告された方が「単独で追認できる場合」は「追認」とみなされ、「単独で追認できない場合」は「取消」とみなされると覚えて下さい。
それでは、本条にしたがって各場合を見ていきましょう。
2.制限行為能力者が能力を回復した後に本人に催告(第1項)
制限行為能力者が能力を回復した後に、本人に催告し、本人が確答を発しなかったときは、「追認」とみなされます。
本人は、能力を回復している以上、「単独で追認できる」からです。
3.制限行為能力者が能力を回復しない間に、法定代理人・保佐人・補助人に催告(第2項)
この場合も、法定代理人・保佐人・補助人が確答を発しない場合は、「追認」とみなされます。
法定代理人・保佐人・補助人は、追認権を有しており、「単独で追認できる」からです。
4.特別の方式を要する行為について(第3項)
第3項は「特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」となっていますが、この「特別の方式を要する行為」というのが分かりにくいと思いますが、これはたとえば、後見人が後見監督人の同意を得て追認すべき場合などです。
この場合、後見人は後見監督人の同意がなければ「単独で」追認することができませんので、「取消」とみなされます。
5.制限行為能力者が能力を回復しない間に、被保佐人・被補助人に催告(第4項)
被保佐人・被補助人は、制限行為能力者で能力を回復していないわけですから、この場合の相手方の催告は、「保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告」ということになります。
そして、この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、「その行為を取り消したものとみなす」ということになります。
被保佐人・被補助人は「単独で追認できない」以上、当然ということになります。
6.まとめ
最後に「まとめ」の表を掲載しておきます。なお、この催告に対して確答がなかった場合というのは、無権代理人の相手方の催告権、解除権者の相手方の催告権でも同様に問題になるので、それも含めた表を掲載しておきます。