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民事訴訟法395条(督促異議の申立てによる訴訟への移行)

【解説】

本条は、適法な督促異議の申立てがあった場合には、通常訴訟に移行し、訴額が140万円を超えるかどうかで、支払督促の申立ての時に、簡易裁判所又は地方裁判所に訴えの提起があったものとみなしています。そして、この場合、裁判所書記官は、遅滞なく、地方裁判所の裁判所書記官に対し、訴訟記録を送付することになっています(民事訴訟規則237条)。なお、督促手続の費用は、訴訟費用の一部とされています。

このように適法な督促異議の申立てがあると、訴え提起があった時期は、支払督促の「申立て時」に遡及しますが、督促異議の申立てが適法であるときは、異議の適法性を確認して宣言する裁判は特に行われないので、いつ通常訴訟に移行するのかが問題とされます。

これについては、異議申立ての受理時に移行するという説と、期日指定時に移行するという説がありますが、期日指定時という説は、通常訴訟へ移行するのは異議申立てが適法であることが前提とされ、それが暗黙裡に判断されたとみられる期日指定時又は地方裁判所への記録送付時が適当であることを根拠としています。

ところで、支払督促の申立に必要な印紙は、訴状の場合の2分の1ですから、通常訴訟へ移行すれば、足りない分の印紙を追貼する必要があります。

次に、移行した異議訴訟の審判の対象は何かが問題となります。

仮執行宣言前の督促異議の場合は、支払督促が失効してしまうので(第390条)、原告の請求それ自体が審判の対象となります。異議訴訟では、その請求について認容又は棄却の判決がなされます。

仮執行宣言後の督促異議の場合は、支払督促の効力は失われないので問題です。判例・通説は、原告の請求の当否が訴訟物となり、支払督促の当否については判決で処理されることになるとしています。つまり、請求に理由があれば支払督促を認可し、請求に理由がなければ支払督促を取り消して請求棄却判決をすることになります。