国土利用計画法1条(目的)
【解説】
1.目的
この法律は、国土利用計画法(国土法)というくらいですから、「総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的」として作られた法律です。
いろいろな規制がありますが、土地取引を行う場合の「届出制」というのが重要になります。そこで、国土法にもいろいろ規定がありますが、「届出制」にポイントを絞って説明していきます。
もともと日本の場合は、土地神話というのがあって、地価は右肩上がりに上昇して下がることはない、と思っていた人が多かったんですが、ご存知のようにバブルの崩壊で土地神話が崩れました。
しかし、この国土法というのは、地価の高騰していた時代に地価の高騰抑制という目的のために、土地取引を行う際に「届出制」というのを規定していました。
ところが、ご存知のように今日、地価は長期的に下落しています。
そこで、もともと地価の高騰抑制という趣旨でできた「届出制」も、現在は土地の有効利用という観点から、その制度ができています。
以上の国土法の届出制について「地価の高騰抑制」→「土地の有効利用」というふうに趣旨が変化しているという状況を頭に入れておいて下さい。
2.土地取引の許可制・届出制の概要
国土利用計画法の規制の大きな柱の一つとして、土地取引の許可制・届出制というのがあります。
この許可制・届出制ですが、簡単にいえば土地の売買契約等を行う際に都道府県知事に「許可又は届出」をしなさいというのが許可制・届出制です。
上図を見て下さい。AからBへの売買契約を行う際に都道府県知事に許可又は届出が必要ということです。このときに売買契約だから当事者が自由に売買すればいいはずですが、許可又は届出をしなさいというものです。
その中で許可制というのは、非常に強力な規制で、土地の取引を行う際に自由に行うことはできず、あらかじめ都道府県知事の許可をもらっておかなければならないというものです。
これは非常事態というのか、そもそも本来自由であるべき私人の土地取引に、都道府県知事の許可が必要というのは、大変な規制です。
次に届出制ですが、この届出制は、さらに事前の届出制と事後の届出制があります。この場合の事前、事後というのは契約の前か後かという意味です。
もともと地価の高騰抑制という趣旨で届出制ができましたが、そのときにできた制度は事前届出制です。つまり、契約の前に売買契約等の届出をしなさい、ということです。そして、この事前届出制は現在でも法律上の制度として残っています。
しかし、現在では地価は下落傾向にあるということで、この事前届出制にプラスして、土地の有効利用という観点から事後届出制という制度ができました。この事後届出制は、実は事前届出制の制度を基に作られています。
したがって、事後届出制は、土地の有効利用という観点から定められていますが、もともとは地価の高騰抑制という観点からできている事前届出制の制度を基に作られているので、地価の高騰抑制という観点も頭に入れておいた方が、事後届出制の方も理解しやすいと思います。
それでは、許可制・事前届出制・事後届出制が適用されるのはどのような場合でしょうか?
上図を見て下さい。
まず、許可制というのは非常に強力な規制がとられる区域なので、「土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われる」ような区域を「規制区域」ということであらかじめ指定して、その規制区域でのみ適用されます。そして、この規制区域というのは、その規制の大きさから現在まで一度も指定されたことがありません。
次に、事前届出制というのは、特定の区域を指定して、その中でだけ適用されます。要するに地価の高騰しそうなところを注視区域や監視区域という形で指定し、その中での土地取引について「事前」の届出が必要だ、としているわけです。規制区域とは程度の差ということになります。
また、注視区域と監視区域は、地価の高騰のおそれの大きさに対応して、届出が必要な土地取引の面積の大きさに相違があります。
これに対して、事後届出制というのは、このように特別の区域を指定するというのではなく、「全国」どこで土地取引を行った場合でも、一定の大規模な土地取引については適用されます。