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被災マンション法13条(団地建物所有者等集会等)

【解説】

1.団地建物所有者等集会

区分所有法における団地管理組合は、団地「建物」所有者を構成員として成立します。しかし、団地内の建物が一つでも全部滅失すれば、滅失した建物の所有者は団地「建物」所有者でなくなり、土地の共有者等ではありますが、団地管理組合の構成員にはなりません。したがって、存続している建物間では依然として団地関係にありますが、その存続している建物所有者の団地管理組合の集会の決議は、滅失した建物の敷地共有者等には効力が及びません。
そこで、本条でこのような滅失した建物の所有者も含めて団地建物所有者等集会の構成員として、政令の施行の日から起算して3年を経過する日までの間は、集会を開き、及び管理者を置くことができるとしています。そして、そこで再建承認決議(第15条)、建替え承認決議(第16条)、建替え再建承認決議(第17条)、一括建替え等決議(第18条)の各決議を行うことができます。なお、各棟の再建決議については第4条に基づいて、建替え決議については区分所有法62条1項に基づいてなされ、団地建物所有者等集会で決議されるわけではありません。
それでは、もう少し詳しく本条の要件を見てみましょう。

まず本条が適用されるには、団地内建物の全部又は一部が区分所有建物であることが必要です。この点は区分所有法の場合と異なります。区分所有法ではすべて一戸建ての場合でも、団地管理組合の成立を認め、集会を開くことができます。そもそもすべて一戸建ての場合には、関係者の人数も少ないので、災害時における特則を設ける必要性や合理性は少ないからです。

次に、当該団地が「土地」を共有している場合に、団地建物所有者等集会を開くことができます。この点、区分所有法が附属施設を共有する場合でも団地管理組合が成立するのとは異なります。土地が共有となっていない場合は、他の建物所有者の承認を得ることなく、建物の再建や建替えを行うことができ、承認決議が必要となる場合は存在しないからです。

そして、そのような状態で「政令で定める災害によりその団地内の全部又は一部の建物が滅失」した場合です。この滅失の中には区分所有建物の一部が滅失し、取壊し決議又は区分所有者全員の同意に基づき取り壊されたときも含みます。

2.復興等のための方法

それでは、建物滅失後の復興等の方法を考えます。
事例として、一団地内にA、B、Cの3棟の区分所有建物があったとします。そして、政令で定める災害によって、Aは全部滅失、Bは大規模一部滅失、Cは小規模一部滅失したとします。

この場合、A棟については、被災マンション法の再建決議(第4条)と、敷地売却決議(第5条)を行うことができます。

B棟については、区分所有法による復旧決議(第61条5項)、建替え決議(第62条)だけでなく、被災マンション法による建物敷地売却決議(第9条)、建物取壊し敷地売却決議(第10条)、取壊し決議(第11条)を行うことができます。そして、取壊し決議の後に再建決議(第4条)と、敷地売却決議(第5条)を行うこともできます。

C棟については、小規模一部滅失なので被災マンション法は適用されず、区分所有法による復旧決議(第61条1項)、建替え決議(第62条)を行うことができます。

そして、A棟を再建したり、B棟又はC棟を建替える場合には、他の棟に影響を与えるので、A棟の再建についての承認決議(第15条)、B棟又はC棟の建替えについては建替え承認決議(第16条)、あるいは各棟の建替え再建承認決議(第17条)が必要となります。これは、B棟の取壊し後の再建決議についても同様です(第15条)。

また、団地建物所有者等集会でA~C棟を一括して再建及び建替えする一括建替え決議をすることもできます(第18条)。ただし、この一括建替え決議は、団地内の建物がすべて区分所有建物でなければいけません。

以上をまとめると下記のようになります。