事例6~ローン特約

【登場人物】

A:売主(宅建業者)
B:買主(宅建業者ではない)
C:媒介業者(宅建業者)

【事例】

宅建業者A所有の不動産について、Cを媒介業者として、Bが購入契約を締結し、手付金を支払った。

当該売買契約には、「Bが銀行から融資を受けることができない場合には、Bは売買契約を解除することができる(ローン特約条項)」旨の規定があったが、手付金の性質については特に定めはなかった。

買主Bは銀行にローンを申請していたが、ローンが不承認になったので、媒介業者Cを通じて解除を申し出た。

しかし、媒介業者からは「契約が成立しているので、手付金は返還できません」と言われた。

どう考えたらいいのでしょうか。

※本事例は、RETIOメルマガ第35号を基に作成しています。

【解説】

売買契約が成立しているというところまでは問題はないでしょう。

しかし、売買契約のローン条項に基づき、ローン承認による契約を解除しています。

ちなみに、このローン条項というのは宅建に出題されたことがありますが、ローン条項には2種類あります。

一つは、「ローン不承認の場合には、契約は解除『される』」という停止条件付のもので、これはローン不承認の場合には、別途契約を解除する旨の意思表示は不要です。

もう一つは、「ローン承認の場合には、契約を解除『することができる』」というタイプのもので、解除権留保型と呼ばれますが、これはローン不承認の場合には解除「できる」だけですから、別途解除の意思表示が必要となります。

本問は、その文言から解除権留保型で、それに基づいて買主Bは解除の意思表示をしています。これも問題ありません。

問題は、媒介業者が「契約が成立しているので、手付金は返還できません」と言った点です。ローン条項に基づいて契約を解除した場合は、売主は手付金等を返還しなければいけません。

なお、手付金の性質については、特に定めがなかったので、解約手付と推定されます。そして、本問では手付解除をしているわけではないので、その意味でも手付の返還は認められます。

以上