事例2~専属専任媒介契約

【登場人物】

Y:媒介業者
X:マンションの売却の依頼者
Xの友人

【事例】

Xは、分譲マンションの一室を所有していたが、そのマンションを近々売ろうと思っていた。 そして、宅地建物取引業者Yは、そのようなXに対して、「マンションを売るなら、ウチがその媒介の依頼を受けますよ。」と勧誘していた。

Xとしては、「Yに媒介を依頼してもいいかな?」と考えていたところ、その話を友人にすると、その友人は自分もこの近くでマンションを探している旨の話をしていた。Xとしては、その友人に売れるのならば、売ってもよいと思ったが、その友人も優柔不断で、はっきり購入の意思を示してくれない。

そして、後日XがYと会った時に、Yの方から、「そろそろマンションの売却について、ウチと媒介契約を締結してください。そのときはウチと専属専任媒介契約でお願いしますよ。」と言ってきた。Xとしては、その「専属専任媒介契約」の意味がよく分からなかったが、友人も優柔不断だし、Yが「専属専任媒介契約ならウチが責任を持って売却しますよ!」という言葉を信じて、Yに依頼しようかと思っている。

みなさんがXなら、どうしますか?

【解説】

Xが、自己のマンションの一室の売却をYに依頼するには、Yと媒介契約(別に代理契約でもよいけど、ここでは媒介で依頼することにします。)を締結することになります。

媒介契約には種類があって、大きく一般媒介契約と専任媒介契約があります。

一般媒介契約は、XがYと媒介契約を締結したとしても、Y以外の業者にも重ねて媒介契約を依頼することができます。このときに、Xが、Y以外の業者に依頼したときは、Yに知らせる必要があるのが明示型の一般媒介契約です。Y以外の業者に依頼しても、Yに知らせる必要がないのが非明示型の一般媒介契約です。

専任媒介契約は、Y以外の業者に重ねて媒介を依頼することができません。

この専任媒介契約は、さらに二つに分かれて、いわゆる普通の専任媒介契約と専属専任媒介契約です。専属専任媒介契約でない普通の専任媒介契約は、Y以外の業者に媒介を依頼することはできませんが、自己発見取引といって、X自身が買主を見つけて契約することができます。したがって、この普通の専任媒介契約は、業者を通して契約するときは、Yを通してしか契約はできないけど、自己発見取引は認められるということになります。

これに対して、専属専任媒介契約は、自己発見取引をすることもできなくなります。つまり、このマンションを売却するには、Yを通してしか売却できないということになります。

さて、そこで本事例を見てみますと、Yは「ウチと専属専任媒介契約でお願いしますよ」と言っています。これは業者からみれば当然ということになります。

それでは、X(依頼者)から見て、専属専任媒介契約を締結することは有利でしょうか?普通に、一般媒介契約と専任媒介契約の違いを勉強すれば、専任媒介契約は、業者には有利だが、依頼者には不利だと思われるでしょう。依頼者は、いろいろな業者に媒介を依頼できれば、選択肢が広がり、より高い値段で買ってくれる買主を見つけることができそうです。

しかし、一概にはそうとは限りません。一般媒介契約の場合ですと、業者は一生懸命買主を探しても、Xが別の業者を通して売却してしまうかもしれませんので、熱心に買主を探してくれない可能性が高くなります。Xが、Yだけでなく、Y1やY2と一般媒介契約を締結すると、Yだけでなく、Y1もY2も、どの業者も熱心に探してくれないので、結局どの業者を通しても、いい買主が見つからない可能性も否定できません。

その点、Yと普通の専任媒介契約を締結すると、Yは手数料で商売している以上、必死で買主を探してくれるでしょう。専属専任媒介契約だと、なおのこと一生懸命買主を探してくれます。

Xのマンションが非常によいマンションで、どの業者でもすぐに買い手が見つかるようなよい物件であれば、一般媒介契約でもよいでしょうが、それほどでもなければ、専任媒介契約でもよいということになるでしょう(もちろんXの判断次第ですが…)

ただ、ここでXの「友人」の存在が気になります。専属専任媒介契約であれば、Xが、直接その友人と契約することができなくなります。専属専任媒介契約以外の普通の専任媒介契約であれば、自己発見取引は可能なので、直接その友人と契約できます。

Xの友人が、優柔不断だということですが、Xが十分その友人に売却できると判断すれば、専属専任媒介契約を締結すれば、友人との契約が不可能になります。したがって、普通の専任媒介契約がよいか、専属専任媒介契約がよいかも、Xの判断次第ということになるでしょう。なお、Xは自分の希望を言ったとしても、Yは強力に専属専任媒介契約を勧めてくるとは思いますが…