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第1章 民法の基本原理

宅建試験で「権利関係」といわれているものから始めます。最初は、民法です。

ちょっと話が硬くなりますが、民法というのは、私人(個人や会社のような法人を指します。)間の売買や賃貸借等の契約などについて規定している法律です。

法律は、大きく「私法」と「公法」に分けることができます。

「私法」というのは、私人(個人や法人)間を規制している法律です。

これに対して「公法」というのは、主に国家と私人の関係を規制している法律と考えればいいです。刑法なんかがその「公法」の例になります。刑法というのは、窃盗とか悪いことをしたときに、警察に捕まり国家によって裁かれる法律です。まさに、国家と私人について規定しているわけです。

ところが、われわれがこれから勉強しようとしている民法は、「私法」に属します。これは、基本的には私人と私人の関係を定めています。たとえば、土地の売買契約などは、個人(又は法人)と個人(又は法人)が勝手に結べばいいだけの話であって、基本的には国家というようなたいそうな話は出てきません。

そして、このように個人(又は法人)と個人(又は法人)の関係は、当事者が納得していれば、どのような内容の契約を締結しようが自由です。このように契約の当事者は、契約の内容を自由に決めることができることを、「契約自由の原則」といいます。この契約自由の原則というのは、民法の基本原理として非常に重要です。これから民法の話をしていく中で何度かこの話が出てくると思います。たとえば、民法に限らず宅建業法でもそうですが、「特約」というのが出てきます。この特約というのは、契約の中に定める特別の約束のことですが、「特約」というのも契約の内容になりますので、当事者が納得している以上、基本的には「特約」というのは有効になります。ただ、例外的に経済的弱者や消費者保護等のために、これらの者に不利な「特約」が無効とされます。

もう一つ、民法は私法の「一般法」だということです。一般法というのは、ある分野に対して一般的に適用される法律です。したがって、私人間の売買契約や賃貸借契約などについて、普通は民法が適用されます。ただ、一般法というのがあれば、「特別法」というのもあって、この特別法というのはある特別の範囲にだけ適用されるものです。特別法というのがあれば、特別法は一般法に優先します。われわれが勉強するものでは、借地借家法・宅建業法等が特別法になります。ここもそんなに難しく考える必要はなくて、借地借家法や宅建業法に適用がないものは、「民法」の規定に戻るということを覚えておけば十分です。後で、「民法に戻る」という話は何度か出てきます。

今までの話は、いわばイントロで、この内容が直接試験で問われるということはないと思います。ただ、この「契約自由の原則」というのだけは、しっかり覚えておいて下さい。これから勉強していく中で、いろいろなことが覚えやすくなります。