下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和7年 問8

【動画解説】法律 辻説法

【問 8】 A、B及びCがそれぞれ3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、甲土地を分割しない旨の契約は存在しないものとする。

1 甲土地につき無権利のDが、自己への虚偽の所有権移転登記をした場合には、Aは、単独で、Dに対し、その所有権移転登記の抹消を求めることができる。

2 Aが甲土地についての自己の持分を放棄した場合には、その持分は国庫に帰属する。

3 Aが死亡し、E及びFが相続した場合には、B及びCは、Aの遺産についての遺産分割がされる前であっても、E及びFに対して共有物分割の訴えを提起することができる。

4 AがB及びCに無断で甲土地を占有している場合であっても、Bは、Aに対し、当然には自己に甲土地を明け渡すように求めることができない。

【解答及び解説】

【問 8】 正解 2

1 正しい。無権利者が、自己への虚偽の所有権移転登記をした場合の所有権移転登記の抹消は、共有物の保存行為となる。そして、保存行為は各共有者が単独で行うことができる。
*民法252条5項

2 誤り。共有者の一人が、その持分を放棄したときは、その持分は、「他の共有者」に帰属する。国庫に帰属するわけではない。
*民法255条

3 正しい。共有物について,遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(遺産共有持分)と他の共有持分とが併存する場合,共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である(最判平25.11.29)。要するに、共有物分割訴訟→遺産分割の順に行うことになる。したがって、Aの遺産についての遺産分割前であっても、共有物分割の訴えを提起することができる。
*民法258条、907条

4 正しい。共有者の一人が共有物を無断で占有している場合であっても、当該共有者も共有持分を有している以上、持分に応じて使用する権利があるので、他の共有者は、当該共有者に対して当然に自己に共有物の明け渡しを求めることはできない。


【解法のポイント】肢3は非常に難しい肢ですが、その他の肢は簡単なので、正解は簡単に分かったのではないかと思います。