下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和4年 問11

【動画解説】法律 辻説法

【問 11】 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約(定期借地権及び一時使用目的の借地権となる契約を除く。)に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がない場合でも、借地権の期間の延長の効果が生ずる。

2 転借地権が設定されている場合において、転借地上の建物が滅失したときは、転借地権は消滅し、転借地権者(転借人)は建物を再築することができない。

3 借地上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。

4 借地上の建物所有者が借地権設定者に建物買取請求権を適法に行使した場合、買取代金の支払があるまでは建物の引渡しを拒み得るとともに、これに基づく敷地の占有についても、賃料相当額を支払う必要はない。

【解答及び解説】

【問 11】 正解 3

1 誤り。借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき「借地権設定者の承諾がある場合に限り」、借地権の期間の延長の効果が生じる。借地権設定者の承諾がない場合には、この延長の効果は生じない。
*借地借家法7条1項

2 誤り。借地上の建物が滅失した場合には、借地権設定者の承諾の有無を問わず、借地権者は建物を再築することができる(借地権設定者の承諾がない場合には、借地権の期間が当然延長される効果は生じないが、建物の再築自体はできる。)。この規定は、転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について準用されている。
*借地借家法7条3項

3 正しい。借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権の期間の延長の効果が生じる。この規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。本肢のような特約は、借地権者に不利であり、無効である。
*借地借家法7条1項、9条

4 誤り。借地権者が建物買取請求権を行使した場合、相手方との間に売買契約が成立したのと同じ効果が生じる。したがって、借地権者は、同時履行の抗弁権又は留置権により、買取代金の支払があるまでは建物の引渡しを拒み得るという点は正しい。しかし、これに基づく敷地の占有によって得る賃料相当額の利益は不当利得として相手方に返還しなければならない。
*借地借家法13条1項


【解法のポイント】この問題は、単純な条文の知識だけではないので、なかなか難しかったのではないかと思います。しかし、肢3については、借地権者に不利であり、無効であることは分かった人が多かったのではないかと思います。また、肢4についても、難しい肢であるとはいえ、留置権の勉強で同じようなことを学ぶので、その類推でわかった人もいたでしょう。