下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和4年 問1

【動画解説】法律 辻説法

【問 1】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、正しいものはどれか。
(判決文)
所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、丙が当該不動産を甲から二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。

1 所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、Cが当該不動産をAから二重に買い受けて登記を完了した場合、Cは、自らが背信的悪意者に該当するときであっても、当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができる。

2 所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、背信的悪意者ではないCが当該不動産をAから二重に買い受けた場合、先に買い受けたBは登記が未了であっても当該不動産の所有権取得をもってCに対抗することができる。

3 所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、背信的悪意者であるCが当該不動産をAから二重に買い受け、更にCから転得者Dが買い受けて登記を完了した場合、DもBに対する関係で背信的悪意者に該当するときには、Dは当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができない。

4 所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、Cが当該不動産をAから二重に買い受け登記を完了した場合、Cが背信的悪意者に該当しなくてもBが登記未了であることにつき悪意であるときには、Cは当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができない。

【解答及び解説】

【問 1】 正解 3

1 誤り。本判決文は、不動産の二重譲渡において、背信的悪意者である第二譲受人からの転得者は、第一譲受人に対する関係で自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって第一譲受人に対抗することができる、としている。本肢は、判決文のような転得者は現れていないが、判決文は第二譲受人が背信的悪意者の場合は、たとえ登記を備えていても、第一譲受人に対抗できないことを前提としているものである。
*民法177条

2 誤り。不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。したがって、Bの登記が未了であれば、当該不動産の所有権取得をもってCに対抗することはできない。
*民法177条

3 正しい。本判決文は、不動産の二重譲渡において、背信的悪意者である第二譲受人からの転得者は、「第一譲受人に対する関係で自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り」、当該不動産の所有権取得をもって第一譲受人に対抗することができる、としている。逆に言うと、第一譲受人に対する関係で自身が背信的悪意者と評価されるのであれば、第二譲受人(D)は当該不動産の所有権取得をもって第一譲受人(B)に対抗することができない。
*民法177条

4 誤り。不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。そして、第三者は登記を備えていれば、悪意(単純悪意)であっても保護される。
*民法177条


【解法のポイント】この問題の判決文(最判平8.10.29)は、過去問(平成24年 問6 肢4)にも出題されている内容の元になっている判例です。したがって、過去問をしっかり勉強していた人は、対応しやすかったのではないかと思います。