下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和3年(12月試験) 問9

【動画解説】法律 辻説法

【問 9】 AがBに対してA所有の甲建物を令和3年7月1日に①売却した場合と②賃貸した場合についての次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 ①と②の契約が解除された場合、①ではBは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要があるのに対し、②では将来に向かって解除の効力が生じるのでAは解除までの期間の賃料をBに返還する必要はない。

2 ①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。

3 甲建物をDが不法占拠している場合、①ではBは甲建物の所有権移転登記を備えていなければ所有権をDに対抗できず、②ではBは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。

4 ①と②の契約締結後、甲建物の引渡し前に、甲建物がEの放火で全焼した場合、①ではBはAに対する売買代金の支払を拒むことができ、②ではBとAとの間の賃貸借契約は終了する。

【解答及び解説】

【問 9】 正解 3

1 正しい。売買契約の場合、当事者の一方がその解除権を行使したときは、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。したがって、Bは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要がある。これに対し、賃貸借契約の場合、解除をしたときは、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。したがって、Aは解除までの期間の賃料をBに返還する必要はない。
*民法545条3項、620条

2 正しい。売買契約が成立すると、その目的物の所有権は完全に買主に移転するので、BはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができる。これに対し、賃貸借契約においては、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
*民法612条1項

3 誤り。売買契約において、買主は登記をしなければ、第三者に対抗することができないが、この対抗できない第三者は、登記がないことについて正当な利益を有するものでなければならない。したがって、不法占拠者は、正当な利益がないので、Bは甲建物の所有権移転登記を「備えていなくても」所有権をDに対抗できる。他方、不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合は、不法占拠者に対して賃借権を対抗することができ、当該不法占拠者に対して、妨害の停止の請求や不動産の返還の請求をすることができる。以上より、本肢では①についての記述は誤りであり、②についての記述は正しい。
*民法177条、605条の4

4 正しい。売買契約において、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者(買主)は、反対給付の履行を拒むことができる。賃貸借契約において、賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
*民法536条1項、616条の2


【解法のポイント】この問題は、一つ一つの肢について、売買の場合と賃貸借の場合を考えないといけないので面倒な問題ですが、一つ一つの内容は押さえておかなければならない知識です。ただ、それなりに難しい部分もあるので、しっかり復習しておいて下さい。この問題も、法改正がからんでいます。